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  [ 決めたゴールを走れ 42 ]
2012-03-31(Sat) 05:30:00
「おい、聖」
「あ、はい」
光さんの声に、ふと目を開ける。
飲んで、殴られ、抜かれて眠って、
電池が切れてしまったように身体が動かない。
ぼんやりと白い天井を眺めていると、
バスローブ姿の光さんがにゅっと姿を見せた。

そう言えば、シャワー浴びてくるって言っていた。
シャワーが終わったから声をかけてきたのか。

俺は横になったまま目を擦る。
シャワーは今日はやめて明日にしよう。
体が重たいし頭も働かない。
驚くことが起きない限り、このまま寝ていたい。

光さんにそう伝えようとして、先にこう言われた。
「もう朝だぞ。シャワー浴びてこい。
 午前中にトランスポーターで資料作って、
 午後のミーティングに配布すんだろ?」

もう朝だぞ、という声に窓側を見ると、
カーテンは閉まっているもののとても明るかった。
時計を見ると7時を示している。

どうやら、俺はがっつりと眠ったらしい。
電池切れだと思っていた身体も、
伸ばしてみると呆気なく動くようになった。
体を起こしてから頭を掻くと、
光さんが傍にきて、俺の口脇を舐めた。

どきっとしながら、光さんを見ると、
男らしくにっと笑われた。
「治るまて舐めるって言っただろ?」

確かにそんなことは言われたけど、
そんなもの本気だとは毛頭思わなかった。
ムードとノリに押されたのだろうと捉えていた。
でも、どうやらそうではないらしい。

だからって、こんなの恋や愛でもない。
進展も発展もないような不毛な関係。
でも、光さんにも俺にも、それでいいのかもしれない。
抜いてさっぱりして終わってしまえば、
あとは元通りで面倒もない。

それなのに口の脇を舐められて、
俺はリアクションに困り、すっと目を逸らした。
「シャワー浴びてきます」

早歩きでベッドルームを脱出する。
笑いを堪える声が、後のほうから聞こえてきた。
もしかして、からかわれたのか。
いや、からかうために男にキスするような人ではない。
男に襲われたならそこら辺は判っているはずだ。

バスルームに入って、まずは深呼吸をする。
服を脱ぎ、湯を出しながら鏡を見た。
見知らぬ発赤が、首にぽつんと浮かんでいる。
何だろうとしばらく考えてキスマークだと思いつくと、
湯気が出るほど頭部が熱くなった。

溜め息を吐きながら首も頭も洗いまくった。
体はさっぱりしたけど、頭はさっぱりしない。
キスマークを擦ったらもっと赤くなって、
鏡の前でがっかりと落ち込んだ。

「おい、聖。さっきから溜め息ばかりだな」
いきなり聞こえた声に、ぎくっと体が震えた。
風呂場と脱衣所を仕切る、曇りガラスのあっち側に、
光さんのシルエットが見える。

「なんでここにいるんですか?」
「これを見せてやろうかと思ってな」

ドアが開いて、光さんが腕時計を見せてくる。
高そうな時計を嵌めているな、ってそれはどうでもいい。
見るや否や、マンガの如く目が飛び出した。

「うわあ!」
「あはは。エントランスに車つけとくから、
 さっさと仕度してこい」
「あ、はい」
光さんは笑いながら去って行った。

急いでバスルームを出て、服を着る。
髪はそのうち乾くだろうと、ドライヤーはかけない。
バッグを担いでホテルのエントランスに走ると、
運転席の光さんが笑顔で迎えてくれた。

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