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  [ 決めたゴールを走れ 43 ]
2012-04-01(Sun) 06:00:00
トランスポーターにダッシュし、ぎりぎり間に合った。
監督に挨拶してパソコンでの入力を開始する。
資料はすぐに完成し、スタッフ分をコピーした。
その間、光さんはコーヒーを飲みながら、
ソファでスマートフォンをいじったり、テレビを見ていた。
正午を過ぎてから昼食を食べる。
食休みをとっているととオーナーが颯爽とやってきた。
それから、徐々にスタッフがピットに集合する。

みんなグロッキーかと思いきやそうでもない。
二日酔いになりましたって顔色はしているけど、
グロッキーってほどではないみたいだ。
どうやら、きちんとセーブして飲んでいたらしい。

「ミーティングを始めるぞ」
みんなの前に監督が立って、ミーティングが開始された。

反省点は、ピット時間の短縮についてと、
カーブでのスピードが安定していないことについて。

ピット作業の練習はしているが本番で緊張してしまい、
スタッフの動きが鈍くなってしまう。
これはもう、何度も何度も練習し、
自信をつけていくしか方法はないだろう。

そして、カーブでのスピードについては、
前部ウイングの形状と、後部ウイングとの相性がよくない、
という結果がスピードに影響したようだった。
実際に走ってくれた光さんがそう証言した。

空力学はレースのパフォーマンスにおいて重要だ。
エンジンやタイヤは決められているものがあり、
ここから得られるアドバンテージはとても少ない。
そこで、空力学によるウイングの開発といったものが、
アドバンテージを得られるひとつになっている。

というわけで、後部ウイングは現状のままで今度は、
前部ウイングを開発してもらうことになった。
コーナリングのスピードを上げることができれば、
ポイントはまだ追いつくことができる。

モータースポーツというのは、制限のある渦中で、
制限のないものをフルに考査し、それを極めていく。
そして、スピードの限界に挑戦していくのだ。
次世代の車両開発に、それらが生かされ紡がれていく。

ちらり、と光さんを見る。
期待と不安と、必ずトップを獲ってやる、
といった意気込みのある表情だった。
その光さんと、目が合う。
頷かれて頷き返したら、光さんはにやりと笑った。

「以上でミーティングは終了だ。
 前回はオフがなかったが今回は、オフを2日間とった。
 みんな、しっかりリフレッシュするように」
監督の号令で、ミーティングは終わりとなった。

俺と監督は残り、もう少しだけウイングの話をした。
場所をトランスポーターに移動して、
コーナリングのスピードを、データ観点より検証をする。
形状、重量、風洞、などの話を詰めて、
ウイングについての話が3時間で終わりとなった。

話し疲れてソファに体を預けていると、
監督の持っている携帯が鳴った。
人生楽ありゃ苦もあるさ、の着メロで笑えた。

「八剣さん、どうしましたか?
 はい、はい、それならこれから構わないですよ。
 ええ、こちらは終わりましたから」
オーナーから呼び出しがあったみたいだ。

監督は、オーナーに呼ばれることが多い。
それだけ頼りにされていたりやることが尽きないのだろう。
ウイングの説明で開発部に出向するとかで、
オフも1日潰れちまったって文句言ってたもんな。

電話を切ってから監督が言った。
「じゃあ、また2日後にな。
 トランスポーター、そろそろ動くみたいだぞ。
 前澤もぐったりしてないで移動しろよ」
「あ、はい。お疲れ様です」
監督は足軽に、トランスポーターを出ていってしまった。

さてと、俺ももう動くとしよう。
俺の家は、次のレース場と、最終戦のレース場との中間にある。
家なんて言いつつ、平凡なただの賃貸アパートだけど。

家賃は、自動振込にしてあるから大丈夫だが、
しばらく帰ってないから、きっと家の中は湿っぽいだろう。
換気をしたり掃除をしたり、布団干したり色々やりたい。

何からやろうか考えながらトランスポーターを出ると、
光さんが立っていた。
周りを見てから、俺の口脇を舐める。

俺は焦り、そして真っ赤になった。
「ちょ‥こんなとこで何するんですか」
「治るまで舐めるって言っただろ」
「いや、だからって、場所を弁えて下さい」
「誰もいないの確かめたって」

にやにやしながら、光さんが言う。
ああ言えばこう言うで、きりがない。

俺は諦めの溜め息をついた。
「それで何の用ですか?」

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