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  [ 決めたゴールを走れ 44 ]
2012-04-03(Tue) 05:35:00
俺は今、いつぞやのように、
光さんの高級外車の助手席に乗っている。
ヴィスコンティの大蛇ビッシオーネと、
ミラノのカラー、そして、勝利を称える月桂冠、
というゴージャスな紋章がついた外車である。
どうしてこうなったか、ちょっと回想してみよう。

トランスポーターの外に光さんがいた。
これからどうするんだ、と偉そうに聞かれた。
帰ることを告げると、家のある場所を訊ねられ、
そこまで送ると言ってきた。
断ったけど断り返されてしまった。

ハイウェイを飛ばしながら、泊まりたいと言われた。
オフがあったけど帰宅できずに留守にしていたし、
部屋もきっと湿気っぽくてとても宿泊できる状態ではない、
ということを説明して遠慮してもらった。

すると、またチャンプルーを食べたいとお願いされた。
それを食べたらホテルに帰るから、とも。

そこまで言われたら俺も、どうぞと言わざるを得ない。
そんなこんなで、スーパーに寄ってからアパートに帰った。
アパートに駐車場はないから、
光さんの車は、近くのコインパーキングに停めてもらう。

鉄の階段を進み、2階にある部屋へやっと到着した。
相変わらず古臭い建物だけど、何だかとても懐かしかった。
しみじみしていると、隣の光さんに肘を突かれた。
「おい、聖。早くドア開けろよ」

しみじみしていたのに、光さんにムードを壊された。
人についてきておいてペースすら合わせられないなら、
ついてきてくれなくてよかったのに。
とは言わず、溜め息をつきながらドアの鍵を開ける。

家の中は暗く、やっぱり若干湿気っぽかった。
入るや否や、窓を開けて空気を入れ替える。
新鮮な空気で、家の中がまるで活気を取り戻すようだ。
見慣れた風景に、心も体も、リラックスする。

「ここが聖の家なのか」
光さんは言いながら、家の中を見たり窓の外を眺めた。

そんなに見ごたえのある家ではない。
6畳2間に、キッチンと風呂とトイレが別々になっている、
どこにでもある平々凡々なアパートだ。

「どこにでもあるようなアパートですよ。
 まあ、光さんの家よりは狭いでしょうけど」
高級なホテルを転々とするくらいだ。
金のある光さんは、自宅はきっと素晴らしく豪華なのだろう。
俺にしては珍しく、ちょっとした嫌味でもあった。

すると、光さんは笑った。
「狭いとか広いとか、そんなの関係ないだろ。
 聖らしい住まいだと思うよ」

金のあるなしや狭いとか広いとかじゃなくて、
そういうの抜きにして俺のことを認めてくれている。
そんな思いがストレートに伝わってきた。

そう言ってくれたことが嬉しい。
なのに、光さんにどう返していいか判らない。

嬉しいならそう伝えればいいだけだ。
でも、ただそれだけじゃない。
どきどきしてきて息苦しくなってしまった。

俺はどうやら照れているらしい。

こんな顔を見られないようにわざと顔を背ける。

「ごはん作ります」
買ってきたものをキッチンに置いて、
俺はすぐに仕度を始めたのだった。

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光の車は、アルファ○メオをイメージしています。
メル○デスやB○Wではありきたりかな、
という勝手なイメージで妄想してみました。


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