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  [ 決めたゴールを走れ 46(R18) ]
2012-04-05(Thu) 06:00:00
つつ、と腹を光さんの舌が滑る。
びっくりしたのとくすぐったいのとで、
目がぐるぐる回りだした。
「何やってるんですか光さん」
「舐めたら治るんだろ?」

それは口の脇の話である。
ヘルメットを投げつけられた腹は、
もうとっくに治っているから舐めなくていい。
例えまだケガが治ってなくても、
こんなところ普通舐めないだろうに。

赤い舌がぬるぬると這い上がってきた。
腹から胸へと移って、くっと胸の突起が舌先で押される。
ぞわっと腰が震え上がった。

「もう‥いいですから‥っ」
「治るまで舐めてやるって言っただろ」
「そこは‥とっくに治ってますって‥っ」
「なら、こっちはまだだよな?」

光さんの舌が、腹から口脇に移った。
傷を舐められつつ唇を啄まれる。
そして、ぬるりと口の中に舌が入ってきた。

まるで、恋人とするような濃厚なキスだ。
こんなことしちゃいけない。
いけないって判ってるのに、気持ちよくて手放せない。
息継ぎの時間すら、惜しく感じる。

「ん、聖‥」
光さんに色っぽく呼ばれて、
心臓のどきどきが加速していった。

キスとモータースポーツは、何だか似ている。
エンジンを自分でかけられない。
そのくせ、アクセルを踏むとすごいスピードが出る。
マシン特有の轟音を鳴動させて、
あっという間に走り抜けていくんだ。

光さんの膝が、足の間の押し入り、
ソレをぐぐっと刺激してくる。
勃っているのを知ってて、わざとやっているんだ。

その時だった。

俺の携帯が鳴った。

同時に震えて俺達は離れた。
あっという間にマシンが走っていっても、
アクシデントが起きればピットに入らないといけない。
現在がまさしくその状態だろう。

着メロでも着うたでもない、平凡な着信音が、
ぴろぴろと鳴り響いていた。
怒ったような光さんが、顎で携帯を指す。

「鳴ってんだから出ろよ」
「あ、はい」

出ないでキスを続けろ、と言われるかと思った。
いくらなんでも光さんはそんなの言わないか。
続けたかったような助かったような、複雑な心境だ。

どきどきする胸を落ち着かせながら、溜め息を吐く。
少しソレも萎えてきて、耳に携帯を当てた。

「はい、もしもし」
「聖、元気?」

女性特有の、柔らかくて優しい声がした。
それは、とても懐かしく聞こえた。
ここしばらく連絡をとっていなかった、姉の声だ。

「元気だよ、姉ちゃん」
「あんたどこにいるの?家?」
「あ、うん。少しだけオフだから帰ってきた」
「そうなんだ。いよいよ最終レースだもんね。
 ちょっとは休んでおきなさいよ」
「そのつもり」

携帯の反対に、光さんが耳をくっつける。
姉ちゃんとの話が、どうやら気になるらしい。
気にされるような話なんかしないのに。

「最終レースが終了したら、こっちに遊びにきなさい。
 みんなあんたが遊びにくるの待ってるんだからね」
みんなとは姉一家のことだ。
救急隊の旦那と、5歳の女の子と3歳の男の子がいる。

「あ、うん。遊びに行くよ」
「遊びにくるならサイン貰ってきてくれない?」
「誰の?俺の?」
「あんたのサイン一銭にもならないわよ」
「酷い言い方。もしかしたら一銭にはなるかもよ?」

俺達の会話に、くすくすと光さんが笑っている。
俺と姉ちゃんとの話を聞かれると、
いつもみんな笑ってしまうのだ。
普通の姉弟の会話で、笑われるような話はしていない。

「で、サインは誰のやつ?」
「そんなの決まってるわ。後藤野選手のよ」

光さんを見ると、にやりと笑っている。
俺は悔しくなって口を曲げた。

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