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  [ 決めたゴールを走れ 47 ]
2012-04-06(Fri) 06:00:00
「こんばんは、聖のお姉さん」
俺のすぐ傍から、姉ちゃんに喋りかけた光さん。
姉ちゃんが凍ったのが伝わってくる。
「え?何?あんたの傍に誰かいるの?」
「あ、うん。光さんが近くにいる」
「光さんって誰?うわ!ウソ!後藤野選手?」
「そうです。後藤野光です」

光さんに携帯を奪われた。
こんなところで姉ちゃんにサービスしなくていい、
と言おうとしたらなぜかウインクを投げられた。
そのせいで俺は何も言えなくなった。

「はい、はい、本物です。そうですか。
 応援ありがとうございます。え?いいんですか?
 じゃあ、オフになったら聖と遊び行きますね。
 あはは、そうなんですよ」
会話の詳しい内容は聞こえない。
だけど、光さんは楽しそうに笑っていて、
姉ちゃんはかなり喜んでいるようだ。

光さんは誰とでも楽しそうに喋るようになった。
だけど、なんだか嫉妬してしまい面白くない。
面白くないんだけどさすがに邪魔するわけにもいかず、
光さんを見ながら冷めたコーヒーを飲んだ。

すると、光さんが迫ってきた。
キスできるほどの近さで息遣いが聞こえてくる。
光さんの目が、俺だけを見つめる。

どきっとして頬を赤くなった。
顔も耳も熱く、心拍も上昇する。
このままさっきの続きをされたら拒めるだろうか、
なんて妄想すると、光さんが携帯を渡してきた。
「そろそろ聖に代わりますね」

ほっとしたような、がっかりしたような。
勘違いしてしまった自分が、情けないし恥ずかしい。
胸に溜まった息を吐きながら、携帯を受け取る。

「最終レース頑張りなさいよ、聖」
「あ、うん。オフになったら連絡するから」
通話が終わった携帯を閉じた。

姉ちゃんから電話がくるとは思わなかった。
しかも、あんな微妙というか絶妙なシーンで。

さて、これからどうしようか。

光さんとの沈黙は嫌いじゃないけど、
今はさすがに気まずい感じがする。

やっぱりこのまま続きをするのかと思っていると、
光さんが立ち上がった。
「俺そろそろホテル戻るわ」
「あ、はい」

拍子抜けした気分で、玄関まで見送った。
ジャケットを着た光さんが、靴を履く。

「じゃあ、またサーキットでな」
「はい。おやすみなさい」
「おやすみ。またな」
そう言って、光さんは去って行った。

1人きりになった部屋をゆっくり見渡す。
テーブルに乗った、2つのコーヒーカップ。
アルバムは開かれたまま置いてあるし、
台所には、2人で食べた食器が洗ってある。

ついさっきまで、ここに光さんがいた。

その名残は、俺の唇にも少し残っている。

俺はきっと疲れているんだ。
だから、こんなにも胸が苦しいんだ。
玄関に立ったまま胸元を押さえる。
しばらく俺はそうしていた。

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