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  [ 決めたゴールを走れ 48 ]
2012-04-07(Sat) 06:00:00
結局、片付けと掃除だけで、
オフはあっという間に終わってしまった。
サーキットへ行くとピットにみんな揃っている。
やる気を漲らせたような顔で立っていた。
「チーフ、新しいウイングが揃いましたね」
組み立てたレーシングカーを目の前に、瀧が言う。

新しいウイングが揃った、というのは、
後部ウイングのパワーを発揮できるよう、
開発してもらった前部ウイングが完成したからだ。
先程、それをマシンに取り付けたばかりだった。

パソコンでシュミレーションしてみたら、
空気の流動も圧力の状態も、パワーアップしていた。
スーパーコンピュータがないから、
スピーディで正確な計算はできないものの、
シュミレーションだけでも立証されれば充分だろう。

「そうだな。優勝できる可能性はまだある。
 気合入れて最後まで頑張ろう」
「はい!」
俺の声に、みんなが一斉に返事をした。

そこへ、光さんが入ってきた。
いつもと変わらない顔で、みんなに挨拶をする。
当然、俺にさえもいつもの顔をしていた。

「メカニックは気合入ってんな」
「新しいウイングが揃いましたからね」
「そんなに変わって見えないけど、
 パワーはきっとすごいんだろうな」
「前部ウイングはパワー重視ではなくて、
 フィット重視で開発が製作しましたから、
 光さんのテクニックを生かしてくれますよ」

そう言うと、光さんはウイングを撫でた。
光さんに応えるように、ウイングが光ったように感じた。

パワー重視ならば、軽量するなり大型にするなり、
どうにでもすることができる。
だけど、前部ウイングはフィット重視型だ。
走行を分析し、光さんの体重やマシンの重量を考えて、
このウイングが完成したという。

だからこそ、少しばかり重みもあるし、
大型ではなくあえて小型にもなっている。
これなら、光さんのスピードは必ずアップするだろう。

「そうだ。おい、聖。ちょっときてくれ」
「あ、はい」

呼ばれるがまま光さんに着いていく。
トランスポーター裏に連れていかれると、
光さんが口脇を舐めてきた。

まさか、こんなところで舐められるとは思わなくて、
ただびっくりするだけだった。

「傷がまだ残ってる。治るまで舐めるからな」
舐めるだけ舐めて、言うだけ言うと、
光さんは嬉しそうに去っていった。

まだしばらく光さんは舐めてきそうだ。

やっぱりレース中もなのだろうか。

期待と不安と困惑に、俺はぶるっと震えた。

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