BLUE BIND

BL小説ブログ。危険を感じた方はお逃げ下さい。
  [ 決めたゴールを走れ 54 ]
2012-04-14(Sat) 06:00:00
ぷは、と離れたのは光さんからだ。
涙はすっかり止まったらしい。
すっきりした、晴れやかな顔になっていた。
どう声をかけていいか判らず、見つめ合う。

俺を見る目が、きらきらしている。

光さんは俺のことが好きなんだろうか。

大学時代の水泳部にも、先輩と後輩で、
そういうカップルがいた。
世の中に、そういう人がいることは知っている。

だけど、ホテルがツインルームなのは、
いつでも女を連れ込むためだと、
さもそれが当然のことのような発言をしていた。
ってことは恋愛の対象は男性ではないし、
それなりに女性と恋愛経験が豊富ってことだろう。

いや、ちょっと待てよ。

「光さん」
「何だよ」
「これまで女性に告白しました?」
「何だよ急に」
「いいから教えて下さい」
「あるわけないだろ。いつも女から寄ってきた。
 よさそうな人と付き合ってきたけど、
 女から飽きれられたり俺から別れたりだ。
 最近はそれも面倒になって、セックスだけだったけど、
 筋トレのほうが楽しくて、それもしばらくしてないって、
 それは前に言っただろ」

付き合うきっかけは女が寄ってくるから。
交際することが面倒になってきた。
セックスよりも筋トレのほうが楽しくなってきている。

交際もセックスも経験があるにしろ、
光さんから誰かをマジで好きになったこと、
ないんじゃないだろうか。
そして、同性の俺になぜか好意を持ってしまい、
そんな自分の感情に戸惑っている。
しかも、光さんは前のチーフに襲われた。
男を好きになることはそいつと同じ類になる。
そういった葛藤も存在するかもしれない。

ここまで考えるとパズルのピースがぴったり合う。
理数系だけに計算式で、光さんを悩みと答えを考えてみた。
だけど、あくまでも推測にすぎない。

俺のこと好きですよね、といくら俺でも聞けない。
でも、切なそうに見つめているし、
俺とキスしたらすっきりしたように感じた。
考えれば考えれるほど、さっきの回答率がアップする。

一流ドライバーからの好意というものに、
同性だからとか気色悪いとか、そんな感情はない。
むしろ、舞い上がってしまうほど心が弾んだ。

俺自身、特技はないし面白みもない。
ランクをつけるなら、よくて中の下だろう。
冴えない俺を、光さんはなぜ好きになったのか。
さすがにそこまでは判らないけれども、
どうしよう、めちゃくちゃ嬉しくなってきた。

「おい、聖。さっきの質問何だったんだよ」
「あ、いえ、何でもないので気にしないで下さい。
 それよりまだ苦しいですか?」
「言われてみればちょっと楽になった」
「そうですか。よかったです」
光さんに被さったまま、顔をティッシュで拭いてあげる。

「明日は一緒に、レース場戻りましょう」
「でも、俺、みんなに迷惑かけた」
「前にヘルメット投げつけておいて、
 迷惑がどうのこうのなんて今更ですよ。
 抱えてでも連れていきます。
 レーシングカーが光さんを待っているんですからね」

言うと光さんは、目を潤ませながら頬を綻ばせた。
「サンキュ、聖」

光さんのことが愛しい。
もうどこにも行かないでほしい。

いつものように、我侭に、強引に、自由に、
何でもやってしまえばいいと思う。
だけど、そのきっかけが掴めないのかもしれない。

そんな光さんに、俺はこんなことを言った。
「明後日のレースで優勝できたら、
 俺のことを好きにして構いません」

次話へ 前話へ

お気に召しましたら一票お願いします。
にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
決めたゴールを走れ | TB:× | CM : 1
決めたゴールを走れ 53HOME決めたゴールを走れ 55(R18)

copyright © 2024 BLUE BIND. All Rights Reserved.
  
Item + Template by odaikomachi