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  [ 青い空を見上げて2nd 8 ]
2010-07-01(Thu) 11:00:25
笹崎侑津弥


ジョーを見ると、イスから立ち上がって、びっくりしていた。
びっくり、というよりは顔色が蒼白している。
よく見ると、クレウスの背後にもう1人いた。
クレウスと同じ顔で髪が長めだった。

「ヘイ!ジョー!とっても会いたかったヨ!」
髪の長い少年は、こっちに走ってきてジョーに抱きつくと、
クラス中の視線を浴びながら、ちゅっと頬にキスをした。

俺は、胸がえぐられるような感じがした。

「それでは自己紹介をしてもらう」
結城は苦笑いし、クレウスの肩をぽんと叩いた。

「はじめましてデス。クレウス・ローバーンいいマス。
 よろしくお願いシマス」
クレウスは、笑って手を振った。

「ボクはミレトス・ローバーンだヨ。
 キュートな女の子いっぱいで、とっても嬉しいヨ」
ジョーに抱きついたまま、ミレトスが教室のみんなを見渡す。

途端、クラス中の女子が騒いだ。
「きゃあ!可愛い!」
「足が長い、目が青い、モデルみたい!」
「日本語上手!もっとお話したい!」

俺にはきゃーきゃーにしか聞こえないけど、
どうやらこんな感じのことを言っているみたいだ。

「荒本、資料室の机一組を、悪いがここに運んでくれないか」
女子を制せない結城は、がっくりと疲れきっていた。

そして、結城の指示で、おかしな席順になった。
資料室の机と井出の机を荒本が運び、一番後ろの廊下側から、
ミレトス、ジョー、クレウス、俺、という順に並んだ。
しかも、机はぴったり付けられている。

「‥席順、おかしい」
俺のぼやきが聞こえたのか、結城に、しれっと言われた。
「笹崎と阿久津、それぞれ知り合いなんだろ?」

「ウツミ?ウツミ!」
ジョーに呼ばれて、はっとして顔を上げると、
いつの間にか家にいて、晩ごはんを食べていた。

もしかして今までのは夢だったのか。

「おい、ぼーっとしてどうした?」
はふはふしながら、グラタンを口に運ぶジョーが、
ダイニングテーブルの向かいに座っている。

俺はフォークをテーブルに置いた。
そこには、グラタンとコーンスープ、サラダが並んでいる。
美味しそうだけど食欲がまるでない。

ミレトスがジョーにキスしてからの記憶がほとんどなかった。
返却されたテストの結果も、どうやって家に帰ってきたかも、
ぼんやりとしか覚えていない。

「‥ジョー」
「ん?」
フォークでレタスをさして、ジョーは顔を上げた。

「‥俺、今日、どうしてた?」
「どうしてたって、いつも通りだったと思うけど」
レタスを噛みながら、ジョーは首を傾げている。

「‥そっか。ならいい」
「どうした?グラタン食べないのか?」
「‥あんまり食欲がない」

ジョーが何でクレウスを知っていたのか。
ミレトスがジョーに抱きついたのはどうしてか。
聞きたいけど、それは、聞いていいのか。

ジョーとミレトスのツーショットが、
目に焼きついて胸が痛い。

「おい、ウツミどうしたんだよ?そこが痛いのか?」
ジョーが心配そうに、こっちを見ていた。

無意識に、俺はシャツの胸元を掴んでいた。
俺は、いつもジョーに心配をかける厄介者かもしれない。
そんなことを思いながら、首を横に振る。

すると、ジョーは、フォークを静かに置いた。
「ミレトスとクレウスのこと考えているのか?」

ぎくっとした。

もしかしたら体が震えたかもしれない。

「やっぱりな。ウツミずっと上の空だったもんな」
「‥さっき、俺はいつも通りだったって言ったじゃん」
「とりあえず、ごはんは食べておけ。ほら、あーん」

フォークでさしたプチトマトを、
ジョーが俺の口元に持ってきた。
口を開けるとプチトマトが放り込まれる。

ごくっと飲み込むと、ぐるると腹が鳴った。
急に食欲が出て、フォークを手にグラタンを食べる。

「‥あっつ」
「あはは。慌てなくてもグラタンは逃げないって」

あまりの熱さに舌がひりひりする。
ジョーの笑い声を聞きながら、ぐびっと水を口に含んだ。

「あとで教えてやるよ。クレウス達と俺とのこと。
 そんなに面白い関係じゃないけど」
にやりと笑うジョー。

その表情から、心配するような関係じゃないと確信して、
俺はグラタンを平らげた。

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