BLUE BIND

BL小説ブログ。危険を感じた方はお逃げ下さい。
  [ 決めたゴールを走れ 66 ]
2012-04-27(Fri) 06:00:00
「ドライバーは、チームメイトに恵まれたようですね」
光さんのインタビューを聞いて、
処置していた楠先生が、顔を上げて俺に笑う。
仲間という存在を、
少しでいいからあいつに感じさせてやってくれ。

半年前の、監督の悲痛の言葉。
客観的評価で、達成できたことを実感すると、
胸が熱くなってきて涙が滲んできた。

光さんにとっての俺は、どんな存在だろう。
チームメイトか恋人なのか、未だにそれは判らない。
でも、光さんは俺のことを信じてくれたし、
俺だって光さんを信じた。
どんな存在だろうと、一緒にここまで頑張ってきた。

下を向くと涙が落ちた。
俺はどうやら泣いているらしい。

「ほら、これから表彰式ですよ」
楠先生が教えてくれて表彰式を見る。

光さんは表彰台の中央に立って、満面の笑顔で、
貰ったトロフィーを掲げていた。
直後に恒例の、シャンパンシャワーが行われた。
2位と3位の選手と一緒に、
シャンパンをかけ合ったり振りまいている。

光さんはシャンパンをラッパ飲みすると、
ガッツポーズをし、笑いながら表彰台を下りていった。
あの人、ラッパ飲みするの好きだよな。

「コマーシャルの後はヒーローインタビューを行います。
 引き続き、ご覧のチャンネルをお楽しみ下さい」
アナウンサーがそう言ってコマーシャルに入る。
楠先生は、チャンネルを変えることなく、
そのままテレビをつけておいてくれた。

繋ぎの袖で、涙やら鼻水やら拭いた。
徐々に勝ったという実感が湧いてきて、
気持ちもゆっくりと冷静になってくる。
同時に楠先生と目が合って照れ笑いした。

「優勝、おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「よかったですね」
「はい。チームの力で勝てました」

コマーシャルが終了しインタビュー突入となった。
長いソファの左側にアナウンサーが座り、
右側には2位と3位の選手がいる。
だけど、そこに光さんの姿がない。
アナウンサーが苦笑いしながら、それの説明をする。

「ヒーローインタビューですが、後藤野選手、
 感極まったあまり腹痛となったようで、
 ちょっと席を外したいと申し出されました。
 さすがのヒーローも腹痛には勝利できないようです」
2位と3位の選手と、それから周りのスタッフ声だろう。
くすくすと笑い声が聞こえてきた。

なんて恥ずかしい人なんだ。
ヒーローインタビューなのに、ヒーロー台無しすぎる。
なんて密かにツッコミを入れながらも、
それもまた光さんらしいかと笑ってしまった。

瞬間、ドアが思い切り開いた。

「おい、聖!大丈夫か!」
トイレに行っているはずのヒーローが立っていた。

次話へ 前話へ

お気に召しましたら一票お願いします。
にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
決めたゴールを走れ | TB:× | CM : 0
決めたゴールを走れ 65HOME決めたゴールを走れ 67

COMMENT

COMMENT POST

:
:
:
:



 
 管理者にだけ表示を許可する


copyright © 2024 BLUE BIND. All Rights Reserved.
  
Item + Template by odaikomachi