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  [ 決めたゴールを走れ 69 ]
2012-04-30(Mon) 06:00:00
ホテルに着くと、パーティー会場の隣部屋に案内された。
そこには様々なサイズや豊富なデザインのスーツが、
ハンガーに吊るされてずらりと並んである。
しかも、パーテーションで区切られた更衣室までもあった。
ポイントの獲得によって優勝できそうなチームは、
大概こうやってパーティーの準備をしているらしい。
優勝できなれけば当然キャンセルとなるが、
日時を変更し、後日それは功労会となるようだ。
と、佐原がみんなに熱弁していた。

しかし、これはすごいな。
俺を含めたスタッフ全員がほうっと息を漏らした。
どのスーツも高そうで輝いて見えてしまう。

「オーナーは貸衣装の会社も経営していますよ」
そんな中で佐原が教えてくれた。

「へえ、そうなんだ」
「パスタの店もやってるって噂があります。
 オーナーは出資するだけで表立たないんですよ。
 社長も取締も、人をわざわざ雇ってますから」

フォーミュラニッポンに、貸衣装に、パスタか。
関連が全くないってことは自分の好きなジャンルなのだろう。
金持ちでありオーナーとしての才能がある。
好きなことを好きなだけ、とことんやることができる。
俺には縁のない人生だな。

「チーフ、俺達もスーツに着替えましょう。
 あとちょっとで、パーティー始まりますよ」
「ああ、そうしよう」
佐原と一緒に、ハンガー前へむかった。

みんな散らばってそれぞれサイズを合わせたり、
デザインやら色やらを選んだりしている。
と言っても静かに、みんな黙々と行動していた。

三木谷はモスグリーンのスーツに着替えていた。
うん、ああいう深い色が合っている。
しかし、ごついせいか私服の刑事みたいだ。

瀧は、紺色のスーツに決定したらしい。
童顔のせいか新入社員のような風貌になった。
いや、それはそれで悪くないんだけど、
本人もそこらへんが気になっている様子だ。

佐原は、ブラウンかワインレッドか、
どっちのスーツを着るか悩んでいるらしい。
鏡の前に、かれこれ5分は突っ立っている。

「ブラウンが似合うんじゃないか?」
「チーフ、いつから見てたんですか?」
「いつから見てたと思う?」

笑顔でそう返事すると佐原は、参ったと言いたげに笑った。
そして、踏ん切りがついたのかブラウンを自ら選んだ。

さて、俺はどんなの着ようか。
考えるのも選ぶのも、ちょっと面倒になってきて、
ピンストライプの入った黒のスーツでいいか、と手に取る。
と、手が痛くてスーツを床に落としてしまった。
それを拾ってくれたのは瀧だった。

「チーフの着替えを手伝いますって、
 ここにくる前に言ったじゃないですか」
「パーティーに行ったのかと思っていたよ」
「言ったことは守りますよ。どうします?
 狭いですけどパーテーション入りますか?」

どうやら、着替えのスペースは手狭らしい。
辺りを見ると、みんなパーティーへ行ってしまったようで、
ここには俺と瀧だけだった。

「狭いならパーテーションに入らなくていい。
 このまま着替えよう。悪いけど頼む」
「はい、チーフ」

まずはシャツの着脱から手伝ってもらった。
ボタンを外してもらい、シャツを脱がせてもらう。
すると、瀧がじっと上半身を見つめた。

「チーフっていい体してますね」
「20年くらい水泳やってたから」
「え?そうなんですか?」
「小さい頃、体が弱かったから親が習わせてくれて、
 中学から大学まで、ずっと水泳部だったんだ」
「へえ、そんなエピソードがあるんですね。
 あ、次はパンツ着ましょうか」

瀧がジーンズのファスナーを下ろしてくれていると、
ドアが開いて誰かが入ってきた。
「おい、聖。いつまで着替えてんだよ?」

ドアを見ると、そこには光さんが立っていた。
ファスナーを下ろされる俺、ファスナーを下ろしている瀧、
という光景に、光さんは固まった。

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