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  [ 決めたゴールを走れ 70 ]
2012-05-01(Tue) 06:00:00
「何やってんだよ瀧」
固まっていた光さんが、怒った顔になる。
「チーフの着替えの手伝いです。
 手のケガでボタンやファスナーを動かせないので」
「おい、聖。そうなのか?」
「あ、はい」

光さんは怒ったまま、つかつかとこっちにやってきて、
瀧が持っていたスーツのパンツを奪い取った。
「瀧、先にパーティー行ってろ。あとは俺がやる」

くいっと顎で隣を差されて、瀧は困ったように俺を見る。
笑って頷くと、瀧もにこやかに笑った。

「後藤野さん、それならお願いします。
 あっちで待ってますね、チーフ」
「うん。すぐに行くから」
瀧がここから去ると、光さんは鼻をふんと鳴らした。

これは何だろう。

いわゆる嫉妬ってやつか。

恋愛に関してはいつも余裕で笑っていそうだけど、
光さんでもそんなもの感じたりするのか。
そんなことを考えてくすくすと笑う。

「何がおかしい?」
「あ、いえ。これは思い出し笑いです」
「そうか。ほら着替えるぞ」

瀧とバトンタッチをした光さんが、着替えを手伝う。
パンツのファスナーから、ワイシャツのボタン、
ネクタイを締めるところまで、光さんの手を借りた。
瀧にやってもらっていた時より、正直すごく緊張した。

そして、久し振りのスーツ姿で立った。
「身長あるから似合うな」
「そうですか?やっぱり窮屈ですよ。繋ぎのほうが楽です」

首を捻ったり肩を回すと、光さんに笑われた。
そう言う光さんもスーツ姿が決まっている。
いや、好きだからとか惚れた弱みとかではなく。

そして、光さんは笑いながら、そっと耳に口を寄せた。

「今日、このホテルに部屋取ったから。
 15階の1501号室、パーティーが終わったらこい」

言ってから光さんは、顔を見られないように振り返り、
さっさと出て行った。
前をむいたまま固まってしまい動けなくなった。

それって、もしかして。

うん、もしかするんだよな。

よりによって今そんなこと言わなくていいだろう。
脈が痛いくらい強く打ち、すごくどきどきした。

でも、痛いくらい嬉しい。

高揚した気分で、俺もここを出て、パーティー会場へむかった。

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