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  [ 決めたゴールを走れ 71 ]
2012-05-02(Wed) 06:00:00
パーティーは、ホテルの大広間で開催されていた。
前のステージにはマイクが立てられてあり、
スポットライトを浴びながらオーナーが喋っている。
その隣には、緊張した面持ちの光さんが立っていた。
会場は、それこそ人で溢れ返っていた。
周りを見ると、芸能人や政治家、
フォーミュラニッポンに参戦していたドライバーにオーナー、
カメラマンにリポーター、雑誌の取材、
オーナーと繋がりがあるようにしか見えない、
企業の社長に金持ち御曹司まで、ここに揃っている。

ざっと見た感じで、たぶん500人はいる。
偉そうな人ばかりで思わず縮こまった。
俺は壁際の伝い、目立たないように移動する。

挨拶が終わって拍手が湧いた。
オーナーに促されて、続いて光さんも喋るようだ。

応援のお礼、優勝のお礼、レースでの苦労話なんかを、
一生懸命、言葉を選びながら丁寧に喋っている。
途中、俺と目が合い、にこりと微笑まれた。
これだけの人数がいるのに、俺のことを見つけたらしい。

光さんはしばらく俺のことを見つめていた。

そして、ふと目を逸らしてまた話を続ける。

意味深な視線に、胸がどきどきして切なくなる。
ホテルに部屋取った、とさっき囁かれた。
それも思い出して、全身がかあっと火照ってしまった。

光さんの挨拶も終わると、乾杯の音頭に、
どこかの社長がビールのグラスを片手にステージへきた。
会場全員に、グラスを持つよう言っている。

俺はグラスを持てず、両手で挟んで持てた。
そして、会場の全員で乾杯し、しばし歓談となった。

「チーフ、ここにいたんですか」
小走りでやってきたのは三木谷だった。

スタッフは別の場所で固まっており、
俺のことを探していたと教えてくれた。
やれやれ、まるで迷子と母親だな。

みんなが集まっているところへ行くと、
ビュッフェから食べ物を取ってきて、
とっとと腹ごしらえを始めていた。
会場の右側に、色んな料理が並んでいる。
パスタ、寿司、洋食に中華と、ジャンルは様々だった。

光さんやオーナーは何しているのか、と目で探す。
すると、監督も加わってメディアの取材を受けていた。

今日のパーティーの主役なんだから、
あっちにもこっちにも引っ張られることだろう。
しがないメカニックチーフは、
静かにパーティーを楽しむことにするか。

と思った時、ぐうと腹が鳴った。
佐原と瀧が一緒に、ビュッフェ前を歩いている。
三木谷は、とっくに何か食べたらしい。

何かそろそろ食べないと、腹が減って胃が痛くなる。
グラスビールを飲み干してから、ビュッフェ前をぶらついた。

パスタもいいが肉も捨てがたい。
いや、寿司もなかなか豪華そうじゃないか。
あ、中華のコーナーに餃子がある。
ホテルで提供する餃子って、どんな味か知りたい。

涎を垂らしそうな顔で歩いていると、
青いチタンフレームのメガネを上げながら、背の高い人が、
俺にゆっくりと近づいてきた。

「すみません、ちょっといいですか?」
優しく聞こえる、ハスキーボイス。
じんと腰に響くような、聞いているこちらがうっとりする声に、
腹が減ったのを俺は忘れて立ち止まった。

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うちのブログでハスキーボイスといえば‥。
そうですよね、もちろんあの人しかおりません。
判らない方は、決めたゴールを走れの、
登場人物欄をチェックすると一目瞭然です(笑)


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