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  [ 決めたゴールを走れ 86 ]
2012-05-20(Sun) 06:00:00
しょんぼりと俯いていた顔が、ばしっと叩かれる。
ちらりと光さんを見ると、照れているのか赤くなっていた。
「いきなりされるとびっくりするだろうが。
 するならするって言ってからしろ」
顔がぱっと上をむいた。
なんだ、そういうことだったのか。
ハイテンションでの行為ではなかったことに、
ほっと胸を撫で下ろした。

って、そもそも、いきなりキスしてくるのは、
俺のほうより光さんのほうが多いだろうに。
ということを訴えるように、じっと光さんを見る。

「おい、聖。言いたいことがあるなら言え」
「あ、いえ」
「目は口ほどに物を言うってな。
 お前のほうがいきなりしてくるだろって目だぞ」
「言いたいこと判ってるじゃないですか」
笑うと光さんも笑った。

ようやく身支度をして、病院へと出発する。
車の流れがよかったせいか早く着いた。
またタクシー乗り場に停めるのだろうか、
なんて思っていると、車はきちんと駐車場に停まった。
よかった、タクシー乗り場じゃなくて。

ほっとして車を降りてから、光さんと病院へ入った。
楠先生から、受付は通らなくていいと伝言を貰っていて、
入ってすぐエレベーターに乗り、院長室へと直行する。
ドアをノックすると、中からどうぞと声がした。
開けると白衣姿の楠先生が座っていた。

「光、前澤君、おはよう」
「聖のこと連れてきたぞ、じいさん」
「おはようございます。宜しくお願いします」
「こちらこそ、宜しくお願いします。
 処置しますので前澤君、ソファに座って下さい」

言われて柔らかいソファに座る。
テーブルには処置の道具が用意されてあった。

隣に楠先生が座り、早速ケガの処置をする。
昨日やってくれたガーゼやテープを全部取って、
薬を塗ったりガーゼを貼り直してくれた。

「じいさん、ピットの引き上げがあるから、
 明日はここに午後くるよ」
「明後日は?」
「言われた通り、取材ずらしたから送迎できる」
「そうかい。頼んだよ光」

送迎があるからとわざわざ取材をずらしたのか。
悪いなと思いつつ、俺のほうが優先なのが嬉しかった。

処置が終了し、今度はサーキットにまだ駐車してある、
トランスポーターへとむかう。
監督が、そこで俺のことを待っていた。
午後のミーティングで使用するためのレポートや資料を、
一緒にこれから作成するために。

「そんな手でキーボードが打てるのか?」
監督にそう心配されたが、痛みも腫れも、
昨日よりずっと回復している。
それに、指先で静かに打てば平気だ。

実際にキーボードを入力してみせると、
スピードも正確さもこれまでとほぼ同様だった。
監督がほっとした表情になる。
余程デスクワークは苦手みたいだ。

「そんなに早くはできませんけど打てます」
「おう、そうか。じゃあ‥」
と、監督の作った資料を見ながら、反省点や改善点、
今後の目標を入力する。
そこに光さんも加わって、色んな話をした。

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