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  [ 決めたゴールを走れ 88 ]
2012-05-22(Tue) 06:00:00
光さんがみんなに配ったドリンクのお陰か、
グロッキーだったスタッフが、ちょっとは持ち直したらしく、
ミーティングは滞りなく行われた。
ミーティングが終了して解散となったが、
俺だけが監督に呼ばれた。
「前澤、人事のことで相談がある。
 あとでトランスポーターまでこい」

監督の険しい表情に、ピット内がざわつく。
そんな中で監督は行ってしまった。

そういう話がくると思っていた。
大事なポジションをレースで無視して、
こんなケガまでしてしまった。
俺のしたことは許されることではない。

バレーボールで例えて言うならば、
リベロで登録していた選手がアタックした、
ぐらいに匹敵することだ。
たぶん、説教された挙句にチーフ降板か、
左遷、解雇、それくらいの可能性もなくはない。

冷や汗が流れ、汗の滲む拳を握る。
すると、光さんが隣にきた。

「人事の相談?どういうことだ?」
「ドライバーには関係ありませんよ」
「チームメイトなのに関係なくないだろ」

食いつく光さんに、俺は溜め息を吐く。
そんな俺に何か気づいたのか、光さんは眉を顰めて、
ごくりと息を飲み込んだ。

「俺もついて行く」
「呼ばれたのは俺だけですから」
「聖だけを行かせない」
「どうしてですか?」
訊ねると光さんは黙ってしまった。

光さんは感覚が鋭すぎる。
俺と監督の間に、何かがあるんだと感じたんだ。
だから、俺だけでは行かせたくない、
自分もついていくと宣言したんだろう。

「‥俺、クビになるかもしれません」

光さんを止めるために、止めを刺した。
ここまではっきり言えば判ってくれるだろう。

ドライバーには関係はありませんよ。
だって、人事についての相談なんですから。
それはつまり、これは俺自身の問題であって、
今更、どうすることもできないんです。
例えそこに光さんがいようとも。
そういうことを集約したつもりの言葉だった。

ピット内がさっきよりも騒がしくなった。
シーズン優勝果たした挙句、チーフがクビになるなんて、
スタッフも騒ぐに決まっている。

すると、光さんが俺を睨んできた。
「バカ言うな。そんなこと俺がさせない」

どうせポジションも守れないようなバカですよ。
それでも、あの時はああするしか思いつかなかった。
後悔するくらいならあんな行動はしない。
チームやレースに反していても、
俺はあれが正しかったと信じている。

「光さんにそんな権限あるとは思えませんが?」
「うるさい。とっとと行くぞ」
ぽん、と光さんに肩を叩かれた。

大丈夫、俺がちゃんと守ってやるから。

光さんの心の声だろうか。
そんな声がどこからか聞こえて、俺はくすりと笑った。

俺達は無言で、トランスポーターへむかう。
トランスポーターの監督室をノックすると、ドアが開いた。
監督が、中からドアを開けてくれた。
光さんを見て、眉を上げながらも中に招いてくれた。

「早く入れ」
「失礼します」

俺と光さんは中へ入った。

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