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BL小説ブログ。危険を感じた方はお逃げ下さい。
  [ 決めたゴールを走れ 91 ]
2012-05-25(Fri) 05:40:00
みんなと喜び合いながら、ピットに戻った。
今回の出来事で、グロッキーから少し持ち上がったのか、
少々メカニックチームが元気になった。
明日には早速、ピットの引き上げがある。
そのため、ピットの内部やマシンの掃除を、
これからみんなですることにした。

俺はそれを眺めながら、監督からのデータを参照に、
まとめる部分や大事なところを、赤ペンで丸をつける。
トランスポーターでやればいいことだが、
ここでやるのは、チーフだからというのと、
判らないことをみんなに聞かれることがあるからだ。

だけど、ちょっとだけまだグロッキーながらも、
みんななりに考えながら動いている。
それこそ初めの頃なんかは、
些細なことでもチーフチーフと質問されていたっけ。
それだけレースに慣れてきたということか。

みんなのスムーズな動きに笑みが浮かんだ。
半年前が、遠くて懐かしく思えた。

「おい、聖」
「あ、はい」

光さんがピットに入ってきた。
レーシングカーとの雑誌の撮影が終了したらしい。
行くとこ行くとこ、取材だの撮影だの、
光さんもとても忙しそうだ。

「サーキット歩きに行かないか?」
「いいですよ」

マシンはみんなに任せることにして、
光さんに誘われた俺は、サーキットを歩くことにした。
丁度、データのチャックも半分終えたところだ。
肩も凝ってきたし少し歩きにいこう。

ピットからサーキットに出てスタートにむかった。
そこから、コースを確かめるようにゆっくりと歩く。

俺達はずっと無言だった。
それでも、何となく気持ちが繋がっていて、
一緒にいるだけで心地よかった。

しばらく歩き続けると、遠くにピットが見えてきた。
そろそろ1周という場所で、俺はふとサーキットを見る。
このコース、どこか見覚えがある。

「あ‥っ」
思わず声を上げた。

昨日の決勝で、先頭でぶつかり合いをしていた2台が、
クラッシュしたところじゃないか。
とっくにマシンは引き上げられているけど、
コンクリートブロックが、あちこち砕け散っている。
間近でこうして目撃し、ざわりと肌が疼いた。

少しでも早かったら、少しでも遅かったら。

光さんも巻き添えだった。

そういう危険を回避できたのは、
光さんのテクニックと運があったからだろう。
それも、モータースポーツの魅力のひとつでもある。

そこで、光さんが立ち止まった。

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