2012-05-26(Sat) 06:00:00
「おい、聖。ここが何か判るか?」
「決勝で先頭の2台が、クラッシュしたところでよね」 「ああ、そうだ」 光さんは懐かしそうに、辺りを見る。
「ミラーが飛んできた時パニックになった。
ドライバーのくせに笑っちゃうよな」 申し訳なさそうに笑う光さん。 ドライバーもメカニックも、普通の人間だ。 予想外のことがあればパニックになって当然なのだから、 そんなことで笑ったりはしない。 それを伝えようとした時、光さんは続けた。 「でも、その時にさ、 聞こえるはずがないのに聞こえてきたんだよ。 光さん危ない、ていう声がな」 遠くを見つめ、光さんが嬉しそうに言った。 インカムを装着していたのはオーナーと監督だけだ。 俺はモニターにむかって叫んだから、 当然、俺の声なんかが耳に届くはずがない。 光さんの目が、空から俺へと移った。 「おかしいか?」 それはまさに奇跡だったのだろう。 メカニックの技術、ドライバーの実力、 それらが融合したモータースポーツという競技。 そこに奇跡があっても、いいじゃないか。 「いいえ。おかしくありません」 笑みを浮かべ、俺は静かに首を振った。 「あの声は聖だろ?」 「はい。モニターへ確かに叫びました」 「サンキュ。そのお陰で助かった」 光さんが笑いながら、そっと手を繋いでくる。 その手をぎゅっと握った。 「次のシーズンも宜しくな、聖」 「こちらこそ、宜しくお願いします」 俺は光さんと手を繋いだまま、ゴールへ歩いて行った。 モータースポーツに終わりはない。 光さんとのレースはこれからも続いていく。 前話へ 決めたゴールを走れ、これにておしまいとなります。 ここまでお付き合い頂きまして、ありがとうございました。 モータースポーツ、書いていてとても楽しかったです。 エロまでの道のりがかなり遠かったので、 皆様がついてきてくれるかどうかが不安でしたが、 途中途中のコメントで楽しいですと言って頂けていたので、 それがもう私の心の支えでした(ノД`) 聖と光は、これからもレースを続けていくことでしょう。 あとがきは独り言で呟くとして(笑) 2人からの報告があるので、そちらをお楽しみ下さい。 「ところで光さん」 「ん?」 「名前の説明の仕方、前にしたらすごい笑いましたよね」 「ああ」 「笑われないものに変えようかと思うんですけど、 今ちょっとだけ聞いてもらえます?」 「いいぞ。言ってみろ」 「聖なる光の聖、ってどうですか?」 「どうしてそこに俺の名前が入ってんだよ!」 「いけませんか?」 「いけなくは‥ないけど‥」 「それなら、これからはこれでいきますね」 うぐ、と光さんは下唇を噛んだ。 それを見届けて、俺はにこりと笑った。 「そういうわけで、次回のお話しは番外編です。 みなさん、もう少しお付き合い下さい」 「は?番外編?俺はそんなの聞いてないし!」 ということらしいので(笑) 引き続き、番外編にて聖と光にお付き合い下さいヽ( ´¬`)ノ | 決めたゴールを走れ | TB:× | CM : 7 | ↑ |