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  [ 銀の翼が恋を知る 5 ]
2012-07-14(Sat) 06:30:00
保留のまま返事はない。
それどころか、夏休みも部活に明け暮れ、
サッカーのみに打ち込んでいた。
夏休みが終了した数日後、顧問の都合で、
サッカーがオフになった。
そんなわけで、俺はタツの家に遊びにきていた。

タツの家は大きくて、今時珍しく3世代同居だ。
時代劇のようなタツの言葉遣いは、
タツのじいさんの影響ではないかと推測する。

で、タツの部屋で試合について、色んな話をした。
夏休み最中、他校との練習試合が何度かあった。
タツは1年生でも唯一スタメンだけど、
先輩達が、FWのタツの動きに追いつかない。

今のスタメンではスキルが足りない、とか。
フォーメーションがばらばらだ、とか。
密室に2人、というシチュエーションだというのに、
ムードも何もなくて俺はいらいらした。

タツにしては珍しくそれを察したのだろう。
「リュウ、いらついてどうした?」

きょとんとした顔で聞いてきやがった。
タツのこの表情はやばいくらい可愛いすぎて、
顔がついつい解されてしまう。
いかんいかん、これじゃあ変態みたいだ。

「サッカーじゃない話をしてもいいか?」
鼻の下が伸びた顔を引き締めて、
こほんと咳払いをした。
そして、タツのお母さんに出してもらった、
美味いコーヒーを一口啜る。

「ああ、いいぞ」
「告白の返事の保留、いつまで?」
「サッカーより大事なのか?」
「俺にとってはサッカーと同じくらい」

タツは唇に指を当てた。
「ふむ、そうか」

ふむ、そうか、じゃないっての。
どんだけ俺のことを焦らすつもりだ。
それとも、こういうプレイなのか。

ずい、とタツに迫った。
鼻先がくっつきそうな距離だった。

タツは顔を赤くして、すすすっと引いていく。
きょとんとした表情も可愛かったけど、
恥ずかしそうな顔もかなりストライクだ。

触ってその温もりを確かめたい。

赤い頬にそっと手を当てると、タツは震えた。

「触られるの怖い?」
「怖くはないがくすぐったい感じがする」
「俺はやっと触れたのが嬉しくて、どきどきする」
「リュウ、俺のどこが好きなのだ?」
「全部」

タツがどきどきしているのが、
顔から、手から、たくさん伝わってくる。
俺が今、タツをどきどきさせている。
でも、わざとどきどきさせて、
好意のどきどきだと錯覚させたいわけじゃない。

俺のことだけを見てほしい。

俺がこんなに好きだって知ってほしい。

タツに触れていた手を、俺はそっと離した。
あれ、とタツが驚いた目をする。

「ちょっとでもどきどきしたなら、
 これからは俺のことをもっとよく見てほしい。
 返事はまだ保留でいいから」
「あ‥ああ、リュウをよく見るようにする」

タツの意識がちょっとでも変化すればいい。
切にそう願いながら頷いた。

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