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  [ 銀の翼が恋を知る 6 ]
2012-07-19(Thu) 06:10:38
タツに告白してから、初めての秋がきた。
そして、冬季選抜予選で、見事に1回戦で敗退。
楽しいほどぼろくそに負けた。
あのスタメンで勝とうというのがムリな話だ。

敗退した翌日、3年生は引退。
来年度になったら3年生になる2年生が、
サッカー部を纏めていく。

と言っても2年生は3年生に毒されていて、
来年もメニューやポリシーに変更はなさそうだ。
それでも、タツと自習練をして、
冬休みも正月も関係なく、サッカー三昧の日々だった。

休みも終わり、テストもぼちぼちクリアして、
とうとう春休みになった。
宿題のない春休みは、絶好なサッカー日和だ。

そんな、部活の帰りのある日。
「リュウ、FWに戻らないか?」

いつものファーストフードで、いつもの席に座って、
ハンバーガーを食べながらタツに言われた。
俺は断るのに手を振った。
「ムリ。俺がいつからキーパーか知ってるだろ?」

小学生まで、FWのタツと俺でコンビを組んでいた。
タツとは攻撃バランスの相性がよかった。
しかし、チームの都合で監督が変更してから、
中学生よりキーパーをやるよう指示されてしまった。

これはこれで、意外とやってみると面白かった。
タツの背後を守備してみせる、なんて思いも生まれた。
フォワード歴3年に対してキーパー歴4年だ。
どっちが板についてるか、なんて、
言わなくたって判りきっているだろう。

タツはパスを貰うために走る。
パスを貰うためにタツが見つけるスペースは、
誰もいない空いたスペースだ。
そうすると、パスを貰えたら走りやすい。

でも、今のスタメンでは誰もそれができない。
やりたい、ではなくて、できないんだ。

リュウならそれができる。

タツなりにそう考慮しての発言だったのだろう。

「ごめんな、タツ」
「いや、リュウが謝ることではない。
 キーパーになる時に止められなかった俺が悪いのだ」

何やらぶつぶつと呟きながら、
ファーストフードのトレイをフィールドにして、
タツがそこに冷えたポテトを並べていく。
和賀高チームの配置パターンだ。

「あのさ、サッカーもいいんだけど、
 ちょっと別の話していい?」
「何だ?」
「俺のことちゃんと見てくれてる?」

瞬間、タツの顔が赤くなった。
こんな反応をする、ということは、
俺のことをいつも見てくれているのだろう。
笑う俺を見て、タツは咳払いした。

「あ‥ああ」
「かかか、そんなに照れることかよ」
「お前のキーパーとしての動きは、とても素晴らしい。
 瞬発力に反応力、それに考察力もある。
 俺のフリーキックを止めるられるくらいだ。
 キーパーに向いていると思う」

ずっこけそうになった。

「そうじゃないだろう!」
「む?」
「いや、いいよ、うん。確かにちゃんと見てるよ。
 でもさ、キーパーとしてじゃなくてさ、
 ちゃんと恋愛の対象としてさ、
 見てくれよって言ってんですけど!」
「判っておる!俺もそうしておる!」

めこ、とタツのジュースの紙コップが潰れた。
ここでようやく、タツなりの照れなのだと悟った。
それにしても、この現代にその言葉はなんだ。

色んな思いが混ざって、つい爆笑した。
俺のことをタツが見てくれている。
ちゃんと考えてくれている。
そして、そんなことを言うだけで照れてくれる。

そんな安心感からか、笑いが止まらなかった。

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