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  [ 青い空を見上げて 4 ]
2010-04-29(Thu) 11:08:13
阿久津城


次は、いきなり席替えだった。
教室にきた結城が、プリントを配り始める。
それには席の升目にランダムに数字が振られていた。
「これから席替えをする。今から箱を回すから、
 一人一枚、入っている紙を取っていくように。
 紙とプリントの数字を合わせた場所が、新しい席だからな」

結城は、くじの箱を俺の机に置いた。
中から紙を抜いて、井出に手渡す。

どれどれ、俺はどこの席になった。
プリントと紙を合わせると、思わずうげっと言いそうになった。

中央列の前から2番目。
授業で寝られないうえに教師に指されやすい、特等席。

俺は昔からくじ運が悪く、いい目にあったことが全くない。
オーマイガーと頭をかきたくなったのをぐっと抑えた。
誰か、頼むからどうかこれがウソだと言ってくれ。

「やった!廊下側の後から3番目!
 阿久津君、どこの席になった?私と近い?」
「近くがよかったけど遠くなりました、はい」
言いながら井出にくじを見せると、残念そうな表情になった。

順番が回るにつれて後方が騒がしくなっていく。
どうやら一喜一憂しながら、楽しそうにくじを引いてるらしい。

「テストの時は今の席になるけど、これから決める席は、
 とりあえず半年間有効になるからな」
騒がしさを消すような、結城の大声。
自分のアイデアが受けたのが嬉しいかったらしい結城は、
にこにこと終始笑顔だった。

最後にくじを引いた人物が、結城に空箱を手渡す。
「よし、ちゃんとくじ引き終わってるな。
 それじゃあ席替えを開始してくれ」

がたがたと音を立ててみんなが立ち上がる。
鞄とプリントを手にして、あっちだのこっちだのと、
クラス全員が移動を開始した。

「阿久津君、またテスト期間にはよろしくね」
井出が手を振ってきたので、笑顔で手を広げてみせた。
「こちらこそ」

さてと、決まった席についた。
教卓の近さにげっそりしつつ笹崎を探してみると、
窓側の一番後に、ひっそりと座っていた。

ああ、俺もあそこの席がよかった。

込み上げそうになる涙を堪えながら、ふと顔を前に戻すと、
「おい、阿久津」
と、結城のアップが出現した。

「うわ。そんなに近づかなくても見えますよ。んで何か用すか」
「荒本が今のメガネだとどうも黒板が見えにくいらしくてな、
 悪いんだがここを譲ってもらえないか?」

荒本を引き連れた結城が俺に頼みにきた。
どうせ俺はくじ運ないし、どこの席になっても同じだし、
だからって別にいじけてないし。
それにまあ、便利がられるのはダブリの運命ってな。

「ああ、どうぞどうぞ」
「ありがとう、阿久津君」
鞄を持ってイスから立ち上がると、荒本がぺこりと一礼した。
あれま、荒本ってばなんて礼儀正しいんだろうか。

「こういうのはお互い様ってやつだよ。んで席どこ?」
「最後列の窓側から2番目、笹崎君の右隣だよ」

ぽっかり空いたその席は、まるで俺を誘っていた。
隣席に無表情の笹崎が、ぼーっと外を見て座っている。
俺のくじ運も、まだまだ捨てたもんじゃない。

「ああ、あそこな」
俺は思わず口が緩んだ。

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