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  [ 青い空を見上げて2nd 14 ]
2010-07-04(Sun) 16:30:27
阿久津城


街中のビルの地下に、クラブがある。
入る前に、ローバーン一家のことを話題にしながら、
ファーストフードで晩ごはんをとった。
新婚のように仲のいい両親、彼女ができたという兄貴、
ミュージシャンを目指しているという姉貴。
みんな、俺のことを気にしつつ、相変わらず元気だという。

「特に、ハーディはジョーにラブのままだヨ」
言ってポテトを食べるミレトスに、思わず苦笑いを見せた。

ハーディとは、ミレトスの兄貴のことだ。
確かバイでアリゾナで迫られたことがあったっけ。
もちろんノーサンキューしたけど。

それから、クラブに行った。
ホールに響くビートは、やっぱり相変わらずだ。
踊ってる人、それを眺めて酒をあおる人、
ナンパに精を出す人など、クラブ独自の雰囲気と熱気がある。

ここにきたのは、中学3年生の2学期以来だ。
当時、何もかもを壊したいほど荒れていた。
そんな中でふと入った店が、ここだった。

踊って、騒いで、疲れた、あの頃が懐かしい。
当時このクラブで友達がたくさんできた。
ここにくれば会えていたから、
携帯もアドレスも交換していなくて連絡とれなかった。
みんなまだいるだろうか。

ふと見ると、カウンターに入っている人も、
DJやって立ってる人も、まるで違う顔ぶれだった。
がっかりと同時に納得もしていた。
あれから2年も経過している、もういるはずがない。

「ジョー、ダンスダンス!」
ミレトスに引っ張られて、ホールの中央まできた。
うるさいだけの音に合わせるように、適当に踊る俺達。

だが、ものの5分もしないうちに、へばってしまった。
つーか体力無いんです、俺。

「あっちで休んでるから」
体を揺らしているミレトスに手を振って、
ホールから俺は立ち去った。

カウンターにかけて頼んだグラスビールを飲む。
そうそう、この黒ビールがドイツ製ので、すっげ美味いんだ。
これだけは変わってなかった。

すると、たぶん同世代だろう、
顔をしっかりと塗りたくった女が、隣に座る。
香水だか化粧だか、やけに臭かった。

いきなり話しかけて、一人できたと強調する。
するっと腕に絡んでくると女は胸をあてながら、
酔ったふりをして誘ってきた。

「俺、連れがいるから」
そう言うと、使えないって顔でどこかへ去った。

あとに残ったのは、フェロモン丸出しな香水だけだった。
腕に胸をあてたりスカートから足を覗かせさえすれば、
男なんてすぐ流されると思わないでほしい。

そう考えると、やっぱりウツミのほうがキレイだ。
もちろん、ウツミ本人にその自覚はない。
だけど、その辺の女より、顔立ちがキレイだし可愛い。
前にそう言ったら、褒めたつもりなのに怒られたっけな。

携帯の時計は、10時35分。
ミレトスを見ると、寄ってたかってきた女と、
楽しそうに喋りながら踊っていた。

携帯にはメールも着信もきていない。

今頃、ウツミはどうしているだろう。

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