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  [ 銀の翼が恋を知る 13 ]
2012-08-26(Sun) 06:00:00
タツは俺の目のことを、サテライトアイ、
といつからか呼ぶようになった。
格好よさそうな名前をつけたのは、もちろんタツだ。

サッカーは、フィールドが広くて大きい。
平面ではなく立体で、俺はそれを捉えられる。
目でフィールドを捉えるんじゃなくて、
頭でそういうイメージを作りやすいんだ。

平面を、個々の点がそれぞれの意思を持って、
あちこち動き回っている。
それを同じ平面で見ていては、
フィールドを制することは難しくなる。
だからこそ、衛星が、
地上を捉えるように立体に見ることができる。

情報を処理し、判断し、予測し、イメージする。

いつからか忘れたけど俺は、
そうすることができるようになった。

そんなことができる人はほとんどいない。
だからこそ、俺はFWとしてタツとコンビを組んだ。
フィールド内にあるディフェンスの空きを、
サテライトアイで見つけられるから、
俺がボールを運び、タツがその空きまで走って、
幾つものシュートを決めることができた。
監督はサテライトアイのことを理解してくれていて、
コンビプレイを褒めてくれた。

しかし、監督交代で、状況が一変した。
新監督はサテライトアイを理解してもらえなかった。
瞬発力へと注目した監督が、
俺自身のことをGKへ転向させてしまった。

GKでも指示することは可能である。
でも、ゴールからは動けないから、
フィールド半分のみの指示だけで精一杯だった。

一時はもどかしい気持ちになった。
FWじゃないなら辞めようかとも思った。
だけど、タツがずっと俺のことを励ましてくれて、
俺にできることをやろうと思えた。

そして、俺はこう誓った。

タツの背を守ろう、と。

「そうだったんですね」
三波は、疲れ切ったかのように息を吐いた。

この能力の説明をすると大抵の人物は、
能力そのものを不振がる。
でも、それが現実であり普通でもある。
そもそも、こんな能力そのものが異常なのだ。

が、三波は、それがなかった。
それどころか、マジメに聞いてくれていた。

「今からでもFWに戻ってみませんか?」
「それもたまに考えるけど厳しいんだよね。
 キーパー歴のがもう長くなるしさ」

今更戻ることに抵抗がなくはない。
FWの感覚はいつでも復活させられるが、
現時点でのメンバーでGKは自分しかいない。
それを思うとGKがいなくなるのは痛い。

「再三、俺からもFWに戻れと言っているのだ」
ふう、とタツが溜め息をつく。

「タツ先輩から言ってだめなら、
 僕から言ってもだめですね」
タツの溜め息を吹き飛ばすように、
くすりと三波が微笑んだ。

その言葉に、どきっとした。
それはどういう意味なんだろうか。

あまり表には出さないが、
俺とタツのことを何かしら察したのかもしれない。
三波はそういうところ敏感そうだ。

しかし、タツは困ったように笑った。
「そうなのだ。
 俺が言ってもだめだから誰が言ってもだめなのだ」

タツは三波のこと、
俺が思ってるようには思ってないようだ。
こいつは元々鈍感だから、まあいいか。

ということで作成してもらった個人メニューを、
明日から早速、やっていくことにした。

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