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  [ 銀の翼が恋を知る 35 ]
2012-11-10(Sat) 05:55:00
雨のせいで諦めムードが広がっていく。
チーム全体が項垂れた。
点が取れていないのに雨が降ったりしたら、
グランドがぬかるんでしまい、
ドリブルワークが余計に上手くいかなくなる。
そんな悪いムードがチームに漂っていた。

マネージャの三波とムードメーカーのマキ、
顧問である岸先生までもが激励していた。
それでも、笑顔になったのは数名だけだった。

というのも、キャプテンであるタツが、
戦略を練っているのか頭部を抱えてしまっている。
ベストアンサーを導き出せないらしく、
両目を閉じて表情を歪めていた。

これまでの試合はタツの指示でプレイしてきた。
そのタツがこんな顔を見せてしまっている。
みんなが項垂れてしまうのも当然のことだった。

ハーフタイムの終わりが近づいてきて、
突然、タツが俺にこう言った。
「リュウ、マキと交代しろ」

俺よりもチームメイトが驚いた。
敵のシュートを防いできた俺が、マキと交代になる。
もちろん、マキのレベルだったら、
俺と同じようにゴールを守り抜けるだろう。
だけど、なぜ、よりによって今そうするべきなのか。

俺はそれを訊ねなかった。
タツは、察しろという目をしていたから、
キャプテンの言うことに従った。

ハーフタイムが終わってみんなグラウンドに戻る。
マキは、俺に笑ってから走り出した。
戻ってくるの待ってるっすよ、という笑顔だった。

試合ははらはらするような展開だった。
やっぱり、敵のシュート数がかなり多い。
こっちの守りが悪い訳じゃない。
雨のせいで視界が悪いのと、空きスペースを狙われている、
そんな印象だった。

頭痛がするほどサテライトを駆使しながら、
フィールドでプレイするみんなへアドバイスする。
だけど、距離と雨音で、届かない声もあった。

悔しくて悔しくて、くっと顔を歪ませる。
すると、背後にいる観客から、こんな声がした。

「おい、いいアドバイスが届かないのはもったいないな」

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