BLUE BIND

BL小説ブログ。危険を感じた方はお逃げ下さい。
  [ 銀の翼が恋を知る 37 ]
2012-11-14(Wed) 09:10:00
迷っているものを払うように、岸先生は、
頭を振ってから肩を叩いてきた。
「喜多、俺からアドバイスできるのは1つだけだ」

俺は、ごくりと息を飲んだ。
そして、ゆっくりと頷いてみせると、
岸先生は静かに言った。

「お前のやりたいように動け」
岸先生の両目が、きらりと光った。

その目をじっと見つめながら、
やりたいことを、いっぱい考えた。
あれもこれも、いっぱい浮かんできた。
だけど、やっていいか判らなかった。

やりたいけど怖さもあった。

「いいんですか?」
「ああ、いい」

力強い返事を、信じる力に変えた。
怖がらなくていいと思えた。
ぐっと拳を握りながら、にこりと笑った。

「ところで、さっきの人は誰なんですか?」
「高校時代の同級生だ」

苦笑いした岸先生が、メンバーチェンジを告げた。
交代するのは当然、GKだ。
濡れたマキが走ってきて、俺の前に立つ。

「リュウ先輩、後のことは頼むっすよ」
「かかか。言われなくても判ってるっての」

マキの手をぱちんと叩き、
ゆっくり歩きながらフィールドに戻った。
チームのみんなが、俺を見る。
俺はみんなに頷いてみせた。

雲が切れ、大雨だったのが小雨になってきた。
空もちょっとずつ明るくなってきている。
だけど、FWやMFが走るには厳しいほど、
フィールドはかなりぬかるんでいた。

やりたいことは、ある。
でも、ルールや建前があって実行できなかった。
それなのに、やっていいと言ってくれた。
目と目が合い、岸先生がにやりと微笑んでくれる。
それは、俺へのゴーサインだと思えた。

俺にしかやれないことがまだ残っている。

だから、俺はフィールドに戻ってきたんだ。

太陽の日差しが、さあっと降り注いだ。
瞬間、ゲーム再開の合図があった。

次話へ 前話へ

お気に召しましたら一票お願いします。
にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
銀の翼が恋を知る | TB:× | CM : 0
銀の翼が恋を知る 36HOME銀の翼が恋を知る 38

COMMENT

COMMENT POST

:
:
:
:



 
 管理者にだけ表示を許可する


copyright © 2024 BLUE BIND. All Rights Reserved.
  
Item + Template by odaikomachi