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  [ 銀の翼が恋を知る 39 ]
2012-11-20(Tue) 09:30:00
パスを受け取ってタツは走り出した。

サテライトである俺と、ミサイルのようなタツ。
最新の兵器システムのような俺達の攻撃は、
いつもこういうパターンだ。
それを止められる者は、どこにもいない。

フィールドがぬかるんでいるのに、
タツはそれを物ともせずに走っていく。
タツは、走る力が強い。
ドリブルしながら走っているというのに、
スパイクから飛沫が飛散されていた。

それが、まるで銀の翼に見えた。
翼を羽ばたかせてタツがフィールドを駆け抜ける。

俺を見て、タツが笑った。
一瞬、時間が止まったようさえ思えてしまい、
にこりと笑い返せた。

タツが音を立てずにシュートを解き放つ。
ボールはナイフのように、真っ直ぐに鋭く飛んで、
ゴールポスト斜め上に収まった。
審判の、ゴールだと示す笛がフィールドに響き渡る。

俺の背後で歓声が上がる。
ふと振り返ると、和賀高のみんなが絶叫していた。
フィールドのスタメンも、嬉しそうに何やら叫びながら、
こっちに駆け寄ってくる。

俺の傍にいたやつらが俺に飛んできた。
タツの傍にいたやつらはタツに飛んでいった。

「やった!リュウ、やったな!」
小高が泣きそうな表情で笑っていた。
2年生も1年生も、待機しているマキも三波も、
みんなが喜んでいた。

もちろん、俺もタツも喜んだ。
タツの傍にいってキスしたいほど嬉しかった。

だけど、これで終わりじゃない。

晴れ上がった空を見ながら、俺は言う。
「喜ぶのは早い!まだ試合は続行する!
 みんな、さっさとポジションにつけ!」

笑顔の小高が、目尻に滲んだ液体を拭って、
軽やかなステップでポジションに戻った。
みんなも、嬉しそうに笑ったまま、
走りながらポジションへと戻っていく。

俺はゴールポストに行こうとした。
すると、ぽんと肩を叩かれた。
振り返るとタツが傍に立っていた。

「どこへ行くのだ、タツ?」

ゴールにはDF2人が、
笑みを浮かべて守りに入っている。

ああ、そうか。

俺はもうGKに縛られなくていい。

どこにいてもいいんだ。

「どこへ行くのだって?
 かかか、どこにも行く訳ないだろ」
タツと共にフィールドに立ち、
試合がまた再開された。

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