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  [ 銀の翼が恋を知る 40(完) ]
2012-11-24(Sat) 05:40:00
俺達は全国大会へ出場し、ベスト4となった。
あのままいけば優勝間違いなしだったんだけど、
なんと、全国大会準決勝前に、俺が風邪を引いた。
情けなくて笑いすら起こらなかった。

俺はタツと共に、同じ大学からの推薦を受け、
すんなり進学まで決定してしまった。
小高も五十嵐も、サッカー推薦で進学先が決定している。

厳しかった冬も、もうちょいで終わりそうだ。
桜の蕾が、判るくらいにふっくらと大きくなっている。
桜通りがもうすぐで満開になりそうだった。

その桜通りを、制服でゆっくり前進する。
たまにしか着用しない制服は、すごく窮屈だった。
だけど、今日ばかりはこれで登校しないといけない。

そう、卒業式だ。

校長の祝辞、卒業証書の授与、生徒会の言葉、
ベスト4を称えたサッカー部へ、
賞状とかメダルとかが授与される。
呼ばれてタツ達とステージに立つと、マキの姿が見えた。
笑っているマキへ小さくピースしてやる。
あちこちから、笑い声がしたけど別に構わない。

校歌を歌って卒業式は終わった。
周りにいる女子が泣いている。
俺も泣くかなと少し思っていた。
涙は出なかったけど胸が熱くなっていた。

クラスに戻って、担任から最後の挨拶があって、
高校の生活がいよいよ完全に終了となった。
悔いは何もない。
宙ぶらりのままの俺ではなくなった。
やりたいことを成し遂げることができたから。

卒業生の保護者と、和賀高の下級生が、
校庭でごった返していて何だかおかしかった。
混沌とした空間で、親を見つけて傍へ寄る。
両親は、先に帰るからゆっくり家に戻りなさい、
と笑ってとっとと帰ってしまった。

タツと合流して、そこに小高と五十嵐も集合する。
すると、いつの間にやらサッカー部のみんなが、
俺達を囲むように周囲に集まってきていた。

「卒業式だってのに練習でもするのか?」
傍にいた岸先生が笑った。
岸先生の言葉に、みんなも笑った。
次第にみんなの笑顔が、ゆっくりと悲しい顔になった。
3年生の分まで下級生が泣いた。

小高と五十嵐も、泣きそうな顔をしている。
すると、タツが笑ってブレザーを脱いだ。
俺はブレザーを投げつけられて、キャッチした。

「みんなに泣く暇はなかろう!
 次の選抜の為に、さっさと練習せんか!
 舎人、ボール運びがまだ甘い。
 マキ、GKはサテライトを生かしたアドバイスをしろ。
 宍戸、フェイントが弱いからもっと筋トレだ」
熱くアドバイスをしていく元キャプテン。
熱さを超えて、うざいような気もするけど、
みんなはマジメに胸に留めているようだ。

「タツはもうキャプテンじゃないだろ?」
呆れながら静かにツッコミを入れる。
すると、タツは勝気に微笑んだ。
「このメンバーが集まればキャプテンは俺だ」

タツの台詞にみんなが爆笑した。
爆笑の中心で、タツも笑った。
でも、どうして笑いが起きたのだろう、
と思っているような顔にもなっていた。
こういうとこが天然なんだっての。

でも、そうだな、タツの言う通りだ。
このメンバーではタツがキャプテンであり、
銀の翼を持つ、ストライカーでもある。

俺だけのストライカーなんて思ってりして。

そんな恥ずかしいことを思っていると、
タツが俺の背中に触れた。

思ってもいいに決まっておろう。

そんな返事をされた感覚になり、
堪えていた涙が、頬を伝って流れ落ちた。

前話へ

銀の翼が恋を知る、おしまいとなります。
お付き合い頂きまして、ありがとうございました。

リュウとタツの3年間はいかがでしたでしょうか。
1年生でキス、2年生で体に触れて、3年生で体を重ねる、
と発展の遅い2人の、3年間の恋愛とサッカーの物語でした。
恋愛とサッカーのみをさくさくと執筆しましたが、
一番書きたかったのが卒業のところです。
そう、お話にてどうにか卒業式が行われたので、
うちのキャラみんなが1つ歳を取ることになります。
その上で、新しいお話や、あれの続編なんかも、
これから執筆していく予定です。

「だらだら」ではなく「さくさく」を目指し、
重要なシーンのみの物語となりましたが、
個人的にはとても大満足(笑)
サッカーのことも学べてとても楽しかったです。
銀の翼が恋を知る、を温かく見守って下さった皆様、
本当に本当にありがとうございました。

ところで、リュウとタツ、どちらも初体験なのです(照)
そう、何気にそんな設定もありました。
初々しさを書けたのも楽しかったです。むふふ。
次回作も、どうぞ宜しくお願いします!


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