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  [ 青い空を見上げて2nd 18 ]
2010-07-05(Mon) 15:15:06
笹崎侑津弥


世界史の授業中。
波多野に借りた教科書を、クレウスと眺めながら、
テストの答え合わせをする。
俺はと言えば、うとうとしながら頬杖をついていた。
テストの点数や脳みその皺が人生じゃないし、
なんて思いつつ、赤点ギリギリのテスト用紙は、
マジで容赦ない。
どうせ親には見せないし、いいんだけどさ。

しかも、俺らしくない珍しいミスをした。
世界史の教科書を、カバンに入れるの忘れてきた。

いつもならジョーに見せてもらえるけど、
今は、俺がクレウスに教科書を見せないといけなくて、
そういうわけにもいかない。

どうしようかと悩んでいると、
普通科に知り合いがいたのを思い出した。
体育祭でジョーにぶつかった波多野だ。

普通科と商業科は、
確かほとんどの授業も教材も同じだったはずだ。
世界史の本多や、国語の豊田が、
そんなことを言っていたのを覚えている。

だめで元々だと覚悟し、波多野に借りに行った。
波多野は、喜んで教科書を貸してくれた。

「‥ありがとう。助かった」
「いいって。何かすごい疲れてる顔してるけど、大丈夫?」
「‥うん、まあ」

目を擦る俺を見て、波多野は
「ちょっと待ってろ」
と、俺に教科書を渡し、何かを取りに教室に入って行った。

渡されたのは猿のぬいぐるみが付いたペンだった。
ぬいぐるみがキーホルダーになっていて、
ボールペンにぶら下がって揺れている。

このぬいぐるみ、ジョーが俺にくれたのと同じやつだ。
ジョーと初めて遊んだ時、ゲーセンでゲットして、
俺に持っていけってカバンに押し込まれた、あのぬいぐるみ。
目が大きくて毛の長い、ちょっと細めの猿だった。

「バイトしてる文具店で試供品でもらったんだ。
 笹崎とこいつ意外にそっくりだし、よかったらもらって」
一見クールな波多野が、にこりと笑いながら渡してきた。

「‥だから似てないって」
「あれ?もしかして似てるって言われたことある?」
「‥別に」
「このキャラクター結構人気らしいんだよ。
 まあ、俺はそういうの疎いからよく判らないんだけど」

波多野は、キーホルダーを眺めながらこう続けた。
「今度、同じキャラで馬のペンも出るんだってさ。
 猿が笹崎なら馬は阿久津かな。
 たぶんまた試供品もらえるから、そしたら持って行くな」

それを思い出しながらあくびを噛み殺す。
すると、クレウスが話しかけてきた。

「ウツミ眠いデスカ?」
「‥うん、まあ、ちょっと」
目をごしごし擦って、あははと苦笑いする。

「テーマパークで疲れたデスカ?」
「‥ううん。それは関係ない。今日もどっか出掛ける?」

ペンを回す手を止めて、クレウスは笑った。
「ボク、アクアリウム行きたいデス」

アクアリウム、考えて水族館だと判った。
ここから駅で6つほど離れている。

「‥いいよ」
「パパさん、チャンバラ見よう言ってたので、
 ディナーなしでいいデスカ?」
「‥うん」
クレウスに返事をしつつ、またあくびをした。

ジョーを見ると、まるで俺のあくびが移ったのか、
ふわっと口を開けていた。
あくびしつつ、返却されてきた世界史のテスト用紙で、
ちゃちゃっと紙の飛行機を作っている。

それを見たミレトスが、目をきらきらと輝かせていた。
ジョーはそれを、穏やかな表情で見ていた。

俺といる時も、ジョーはああいう顔していたんだろうか。

もらった猿のボールペンを転がしながら、
そんなことを考えていた。

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