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  [ 青い空を見上げて2nd 19 ]
2010-07-06(Tue) 06:19:13
笹崎侑津弥


「‥で、どうしてこうなるんだ?」
ぼやいたのはジョーだった。
水族館の入館口で、ジョーとミレトス、
俺とクレウスがばったりと会ってしまった。
水族館をやめて移動しようにも
双方すでにチケットを購入してしまっている。

まさかのブッキングに、ジョーと俺は溜め息をついた。

「‥先にジョーはミレトスと行って。
 俺はクレウスとここで待つから。な、クレウス?」
「オーケー。ここで待つデス」

クレウスが親指を立てて笑顔を見せると、
ジョーは不機嫌そうに、ミレトスと共に館内へ入っていった。
いつものように、ジョーの腰をミレトスが掴んでいる。
学校ではおなじみの光景だけど、俺はやっぱり慣れない。

2人の後姿が、眩しくて羨ましい。
だから、なるべくそれを見ないようにした。

パンフレットを見たりポスターを眺めたり、
入館口にあるカフェでクレウスと会話したりして、
20分後、ようやく中へ入っていく。

キレイな海の幻想空間に包まれながら、
順路に従って館内を歩いた。

この水族館にも、ジョーと遊びにきたことがあった。
だから、ある程度はクレウスを案内できる。

ここは、水生生物を開放してそれを展示するだけでなく、
各水槽では魚以外の、石、水草、照明などの配置にこだわり、
それが1つのアートになるような作りになっていた。
水生生物と、それらを取り巻く環境も見て楽しめるように、
こういった展示をしているという。

生物の世界の神秘を、最近はどこも芸術的に表現している、
とジョーが前に言っていた。

「‥って、人の受け売りだけど」
と加えるのを忘れない俺。

すると、突然、俺はクレウスにシャツを掴まれた。
「‥何?どうしたの?」
「こうしていれば、ウツミと離れないデス」

さっき、クレウスは誤って従業員扉に入ろうとしていた。
漢字が読めなくて順路と思ったらしい。
クレウスが迷うよりはマシかと思い、そのままにする。

いつも笑顔のクレウス。
ジョーと違う質感の温かさが、そこにある。
俺はその笑顔に癒されて、そして安心しきっていた。

しばらく歩くと、巨大水槽がある中心部分に、
ジョーとミレトスを発見してしまった。
ここには自販機もあってちょっとした休憩場所になっている。

せっかく入館口で20分待ってたのに、
またブッキングするなんて、がっかりどころじゃない。

俺のシャツを握るクレウスの手を、ジョーが見ていた。
その目が俺を捉える。
ジョーの冷たい瞳に、俺はただ黙っていた。

「ウツミ、ボク達も休むデス」
クレウスが屈託のない笑顔で、イスに座った。
すると、ジョーがミレトスに何か言ってそこから立ち去った。

ミレトスがジョーの腕を掴んでいて、
ジョーも、ミレトスの肩に手を置いている。
そのせいで体の密着度が高くなっていた。

思わず俺は、ぎゅっと唇を噛み締めた。

「‥俺コーラ買ってくるけど、何か飲む?」
「ウツミの少しもらいマス。ボクだけで1つはいらないデス」
「‥判った」

俺はコーラを買いながら、何度も深く呼吸し、
心を少しだけ落ち着かせて、クレウスの隣のイスに座った。
冷えたコーラでテンションが戻るといいんだけど。

「‥飲む?」
「サンキュ」

クレウスは缶を受け取って、コーラを口に含んだ。
「オオ。アメリカと同じ味がシマス」

俺にコーラを返してきた、クレウス。
受け取ってまたコーラを口に運ぶと、
缶を持っていない方の手に、クレウスが手を重ねてきた。

突然の出来事に、びくっと体が震える。

そして、俺の手を取り、クレウスは手の甲にキスをしてきた。

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