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  [ 雨上がりの最果てで 12 ]
2012-12-24(Mon) 06:40:00
波多野を見ないように朝食を済まして、
おばさん達に礼を言った。
またおいでね、との笑顔へ一礼する。

波多野と共に部屋に戻り、
昨夜のことがなかったようにゲームへ誘導され、
じゃあ素材収集だけなら、とプレイをする。
こんな時に限って、ただの素材収集なのに、
レアアイテムが出たりして困るんだ。

波多野にとって俺という存在は、
一緒にゲームをするだけの価値なのだろうか。
会話は、いつもよりは少なかったように思うけど、
俺ってなんだろうなと思いながらゲームをした。

昼になる前に、俺は波多野家を出た。
高校を卒業してから大学に入学するまで、
退屈すぎるほど時間があるから、
バイトをたくさん入れてしまっていた。
という訳でこれからバイトに行く。

文具店に到着し、ロッカールームで着替えをする。
ここでは制服という制服はないけど、
白いワイシャツに黒いスラックスかスカート、
といった清楚な恰好が義務付けられていた。

今日は、前半は画材売場で会計、
後半は倉庫の整理、ってスケジュールになっている。
仕事中は、目の前のことだけでいいから気が楽だ。
レジが落ち着いてふと我に返ると、
それだけで波多野のこととか昨夜のこととかが、
思い出されてしまって落ち着きがなくなる。

休憩中、倉庫の隣にある休憩所で休みながら、
いつもの缶コーヒーを飲んだ。
はあ、と溜め息をつくと前の席に、誰かが座った。

営業の佐伯さんだ。
波多野とああなったきっかけとなった人物である。

「郁央、お疲れ」
「お疲れ様です、佐伯さん」
「らしくない溜め息ついてどうした?」
「あはは、どうしたんでしょうね」

あんたが原因ですよ佐伯さん、
とは言えずごまかすために笑ってみせる。
すると、佐伯さんはそれより言及はしてこないで、
ネクタイを緩めながら缶コーヒーを飲んだ。

俺がバイトとして働いて、3年。
仲良くなった社員さんが何人かはいる。
佐伯さんも仲良くなった1人だ。

ちなみに、佐伯さんは中高大とラグビーをしていた。
頭はスポーツ刈りで、がたいがいい。
営業ってよりは土方っぽいけど、成績は優秀で、
営業部長である柏葉さんと恋人同士だ。
はあ、とまた溜め息をついた。

「ほら、さっきから溜め息ついてんじゃん」
「そりゃあね、俺だって悩みますよ」
「俺でいいなら聞いてやるから言ってみろって」

はあ、とまた溜め息をついて俺は言った。
「じゃあ、ここでキスしないでもらえます?
 これまでも何回か目撃してますよ」

佐伯さんは恥ずかしそうに赤面して笑った。
見られているとは思わなかったのか、
軽めに謝られ、缶コーヒーを奢ってもらった。

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