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  [ 雨上がりの最果てで 17 ]
2013-01-02(Wed) 07:10:00
「郁央君は崩れてきた段ボールの下敷きになり、
 意識消失、腹部出血と左腕骨折で、
 こちらの楠総合病院へと救急搬送されてきました。
 手術は成功、自発呼吸可能、
 術後のバイタルも安定しているので、ICUではなく、
 敢えてこちらの一般病棟に移っています」
女医さんが兄貴達にそう説明する。

説明後、赤メガネを白衣のポケットに入れて、
ファイルを看護師に手渡した。
そして、ウェーブのかかった長い髪を靡かせながら、
軽く溜め息をついて腰に手を当てる。

「満君、これでいいかしら?」
「ありがとうございます、由夢奈さん」
「いいのよ。いとこの頼みですもの。
 谷村君、そろそろ点滴を交換してちょうだい」

楠一族というのは医療関係者ばかりだと、
いつだったか聞いたことがある。
女医さんの名札には、血管外科担当楠由夢奈、
という字が刻まれていた。
コネとは色んなことができて恐ろしいものだ。

その間にも、谷村さんという看護師が、
血圧やら脈拍やら、ファイルに書き込んでいる。
それを終えて、女医の指示で点滴を交換した。

女医は点滴についても兄貴に説明した。
ベッドに寝ている俺は、どうやら意識がないらしい。
だから、意識が戻るまでは点滴を続けて、
そこから栄養を補給するそうだ。
人っていうのは点滴だけでも生きていける。
すごいことだろうけど、ちょっと恐ろしくもある。

「やるだけのことはやりました。
 あとは、郁央君の意識が戻るのを待つだけです」
「そうですか‥ありがとうございます‥」

兄貴が、弱々しく一礼する。
顔は見えないけど体を震わせていた。
満さんが、その肩を支えると、
由夢奈さんが兄貴にアドバイスをした。

「残念ながら医療には限界があります。
 医療だけではフォローできない部分でこそ、
 ご家族の出番です。
 郁央君に、たくさん話しかけてあげて下さい。
 喜ばれると思いますし、郁央君への刺激になって、
 起きてくれるかと思います」
「はい‥ありがとうございます‥」

兄貴が、更に深く頭を下げる。
満さんも礼をすると、
由夢奈さんと谷村さんは退室していった。
俺達だけになった病室に、
心拍を示す機械の音が、静かに響く。

一礼を終えた兄貴が、目を潤ませながら俺を見つめた。
「心配させるな‥郁央のバカ‥」

やがて、兄貴は満さんの胸元で泣いた。
それを見ながら、ふわふわと浮いていた俺も、
涙が滲んできて目を擦った。

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あけましておめでとうございます。
本年も宜しくお願い致します。

今年は、続編を書くのが目標です。
新作や新キャラも考えるのは好きなのですが、
いかんせん少々飽きてきたので(笑)
あのキャラやこのキャラの、
続きのお話を書いていければと思っています。
「え?あの話の続きやるの?!」
と皆様に驚かれるものも考えておりますので、
今から書くのが楽しみです。むふふ。

今年もマイペース更新となりますが、
お付き合い頂けると幸いですm(_ _)m


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