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  [ 雨上がりの最果てで 18 ]
2013-01-04(Fri) 05:50:00
兄貴達は、ベッドの傍の椅子に座って、
喋ることなくしばらく黙ったままでいる。
30分くらい経過してから、ドアがノックされて、
慌ててドアが開かれた。
驚いたことに父さんが立っていた。

「と‥父さん‥」
俺と兄貴の声が、ハモった。
正確には、病室に響いたのは兄貴の声だけなんだけど、
俺にはハモって聞こえた。

父さんはスーツ姿だった。
はあはあと息を切らしながら汗を流している。
病院から連絡がきて、急いでここに駆けつけた、
という感じだった。
ネクタイを緩めながらベッドに近づいてきて、
顔を歪めながら俺を見つめる。

「郁央、舞斗、久し振り」
「うん、久し振り」
「舞斗は、相変わらず元気そうだな」
「元気だし大学も順調だよ」
「郁央の容態は?どうなんだ?」
「手術は成功。意識が戻るのを待つだけだって」
「そうか」

父さんはネクタイをバッグに入れる。
そのバッグからハンカチを取り出して額を拭うと、
満さんの存在を見つけた。
瞬間、父さんの頭にハテナが浮かんだ。

「舞斗、そちらの方はどなただ?」
「あ、えと、あの‥」
「申し遅れました。楠と申します。
 舞斗君の友人で、この病院の関係者です」

満さんは名刺を渡しながら、
ここの院長が自分の祖父であり、
医療関係全般に、親族があちこちに存在すると、
父さんに判りやすく伝えた。

それらを聞き終えてから、はっとした父さんは、
スーツの内ポケットから小さなアルミケースを取った。
アルミケースは名刺入れになっていて、
少しだけ慌てながら、一枚を手渡す。

「こちらこそ申し遅れました。
 仲村舞斗と郁央の父親で、仲村雄介と言います」
「お話はかねがね伺っております」
「父さん、静流さんと茉麻ちゃんは?」
「こっちにはきていない。
 茉麻はまだ1歳だし、あっちの家で待っている」

静流さんは、父さんの奥さんだ。
茉麻ちゃんは、父さんと新しい奥さんとの間にできた、
小さい女の子のこと。
俺達にとっては異母兄弟という存在になる。

静流さんと茉麻ちゃんと一緒に、
父さんは出張先で暮らしている。
俺達は、転校することに抵抗があって、
ここに残ること決めた。
それでも親子の関係は順調にいっている。

「そうなんだ」
「静流がとても心配していた。
 元気になったら2人で、あっちに遊びにこい」
「ありがとう。そうするよ」

兄貴が微笑み、父さんが笑った。
俺も、誰からも見えていないけど、
嬉しくて笑った。

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