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  [ 雨上がりの最果てで 22 ]
2013-01-12(Sat) 07:00:00
悲しそうな顔だった母さんが、
手でマイクを作りながら、急に笑う。
「それじゃあ、母さんはカラオケの続きするから、
 あっちに戻るわね」

ムリして笑っているのが判った。
悲しいのを堪えながらも、ここへきてくれた。
そして、俺のことを導いてくれた。
それなら、俺は、母さんに導かれよう。

「判った。カラオケ楽しんでね」
「ええ。今度またこっちに様子見にくるわ」
「いつでも待ってるよ」
俺の頭を撫で、母さんは飛んでいった。

ほんのちょっとの時間だったけど、
母さんに逢えて嬉しかった。
悪いことばかりじゃなくて良いこともあるもんだ。

さて、これからどうしようか。
病室ではなぜか談笑モードに突入していた。
ベッドに寝ている俺は、相変わらず無表情だけど、
波多野が笑顔なら、それでいいや。

そんな時、ドアがまたノックされた。
今度は誰なのかと思っていたら、
なんと、佐藤文具店の佐藤社長と、
秘書である塔野さんが、ここへやってきたのだ。

単なるバイトの俺に、社長自らのお見舞いにくるとは。
俺はびっくりして口をあんぐりと開けた。
波多野以外は、どちら様ですかという顔をしている。

佐藤社長は38歳だ。
5年前に社長に就任後、文具店をかなり拡大させた。
オリジナル商品を製作するための部署を新設、
店内の商品の配置の変更、商品の増加に人員の確保、
裏でそれらを操っていたのが、秘書である塔野さんだと、
文具店ではすっかり都市伝説になっている。

ちなみに、塔野さんは36歳で、
佐藤社長の父親である前社長の時期から、
ずっと秘書をしている敏腕者だ。
2人共、びしっとスーツを着こなしている。

社長は、父さんに名刺を渡した。
「仲村君がバイトしております文具店で、
 社長をしております佐藤でございます。
 僭越ながらお詫びに参上しました」

言うが早いか、社長と塔野さんが深々と一礼する。
父さんと兄貴と満さんが、驚いた顔をした。

「当社の不備のせいでご子息に怪我をさせてしまい、
 誠に申し訳ございません」
90度、上半身を傾けて謝った社長。
塔野さんも続けて無表情のまま謝った。

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連載の途中で申し訳ございませんが、
「その雨の最果てで」から「雨上がりの最果てで」
へとタイトルを変更致しました。
と言いますのも「その~」というタイトルのお話が、
これで3個目だったと今更知りました。
もうね、気がついて驚きましたよ。
自分のレパートリーの皆無さに。とほほ。

今後は「雨上がりの最果てで」で、
水色共々宜しくお願い致しますm(_ _;)m。


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