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  [ 雨上がりの最果てで 23 ]
2013-01-14(Mon) 07:00:00
「あ、いや、頭をどうか上げて下さい」
父さんが慌てながら言うと、
社長は神妙な面持で、頭をゆっくり上げた。
それを確認した塔野さんが、続けて頭を上げる。

そして、お金に纏わる話が始まった。
「入院費や治療費は、こちらで全面負担致します」
「それはこっちで負担しますからご心配なさらずに」
「いえ、そういう訳にはいきません」
と終わりの見えない話をする、社長と父親。

なんか、俺が寝ているのにお金の話とかイヤだな。
でも、それが大人の世界なのかも。
兄貴も波多野も、やっぱりイヤそうな顔をしている。
俺がここにいたら同じような顔をするだろう。

そこに割って入った人がいた。
笑っている満さんだ。
笑っているのに黒いオーラを放っている。

「郁央君の病室でする話ではないと思いますが?」

顔だけが笑っている。
それなのに、目や声は、少しも笑っていない。
室内の全員が、ぞくりと体を凍らせた。

しばらくしてから、塔野さんが社長のことを、
軽めに叩いて、自分の腕にしている時計を見せた。
どうやら、これからどこかへ行くみたいだ。
社長っていう役職は、忙しいと相場が決まっている。

「仲村さん、申し訳ございませんでした」
「いいえ、とんでもありません」
「仕事の関係で、これから出張がありますので、
 このお話はまた改めさせて下さい」
「判りました」

社長は、父さんに頷いてから満さんに謝った。
「あなたにも謝らせて下さい」
「こちらこそ余計な真似をしました。
 ただ、ここでするには無粋な会話ではないかな、
 と私なりに思っただけです」
「仰る通りです。思い改めます。
 それでは、後日にまた改めて連絡させて頂きます」

社長と塔野さんは全員に一礼してから、
ベッドで寝ている俺にも、深々と一礼し、
そこから去って行った。

病室の全員が、疲れ切ったのか息を吐いた。
浮いている俺も、気が疲れて息を吐く。
さっきまで談笑モードだったのに、
そんなものはなくなり、重いムードが漂った。

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