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  [ 雨上がりの最果てで 24 ]
2013-01-16(Wed) 06:20:00
「これからどうする、舞斗?」
父さんが兄貴に話しかける。
外はすっかり暗くなっていて、
病室の時計も、いつの間にやら8時だった。
どうやら面会時間終了らしい。

父さんも兄貴も満さんも、きっと疲れている。
俺はどうなるか判らないままだし、
これからが長期戦になるだろうから、
しっかりと休んだほうがいい。

「そうだね、帰って休むよ。
 ここにいたってしょうがないし、
 郁央の友達に、郁央のこと連絡もしたいし。
 それにさ、郁央にもしも意識があったら、
 休んだほうがいいって言うだろうから」
兄貴が笑いながら答えた。

さすが兄貴、俺がどう思うか判っている。
兄弟としての意思疎通は伊達じゃない。
兄貴と満さんにだって負けないかもしれない、
なんて言ったら満さんに笑われるかな。

兄貴の視線が、ベッドに寝ている俺から、
隣にいた父さんに移った。
そう言えば、父さんはあっちに戻るのだろうか。

「父さんは?あっちの家に帰るの?」
「いや、有給を取ったからしばらく自宅に戻る」
「別にそれは構わないけど、仕事は大丈夫?」
「こんな時くらいついてやるのが親だろう。
 それに、子供がそんなこと心配するんじゃない」

いや、子供だからこそ心配するんだよ。
うちの家庭事情は、他とはちょっと違うんだ。
家族のこととか仕事のこととか、
何もできなくても気にはなるもんさ。

「では、そろそろ引き揚げましょうか。
 仲村さんに舞斗君、車を出しますから家へ送ります。
 波多野君もご一緒にどうぞ」
満さんが言うと、兄貴と父さんが笑った反面、
波多野が拒むように両手を振った。

「いや、俺はここから歩いて帰りますから」
どうやら、送ってもらえると思わなかったようだ。
そりゃそうだ、波多野はまだ高校生だもん。
車で送ってくれるような人は近くにいないだろう。
親戚とか親類なら、そういうこともあるだろうけど、
満さんとは初めてここで逢っただけだしな。

すると、満さんが波多野の後頭部を撫でた。
「怪我はないかもしれませんが色々ありましたから、
 波多野君も、疲れていると思いますよ。
 それに、波多野君を送らないと郁夫君に叱られます」

満さんの目が、ベッドの俺をちらりと見る。
波多野を送ろうとする口実と判ってはいるけど、
満さんのことを叱るだなんて、恐れ多い。
でも、その申し出は、波多野にとっても自分にとっても、
とてもありがたいものだった。

それでもまだ、波多野は迷っている顔をしている。
最後の一押しは、微笑んでいた兄貴だった。
「そうだよ。波多野君も一緒に、ね?」

微笑みに安堵したのか、
波多野は申し訳なさそうに少し頷いた。
そして、3人は、ベッドに寝ている俺と、
浮いている俺をここに置いて、帰って行った。

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