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  [ 雨上がりの最果てで 26 ]
2013-01-19(Sat) 06:15:00
院内探索後、暇で病室に戻る。
ベッドに寝ている俺に、重なるように寝てみたけど、
やっぱり状況に変化はなかった。

外がゆっくりと明るくなってきて、
院内が、少しずつだけど騒がしくなってきた。
日勤をする看護師さんにお医者さん、
掃除の人、調理の人、受付の人、薬剤師の人、
ここで働いている色んな人が、
続々と出勤し、病院の外来受付が開始する。

ふと、俺のバイトのことを考えてしまった。
佐藤文具店には、バイトがたくさんいるから、
俺が抜けたくらいでは痛くも痒くもない。
それでも、麻生さんとか柏葉さんとかは、
きっと心配しているだろう。

麻生さんならきっとお見舞いにくるかもしれない。
あの人はそういうとこ優しいんだ。
無事にここを退院できたら挨拶しないとな。

と、ここで波多野がやってきた。

びっくりして、ぶっと息を吐いた。

どうしてきたんだろう。
まさか、やっぱり俺は波多野を庇えてなくて、
どこかしら怪我をしていたのか。
受診するのは内科か、それとも整形外科なのか。

はらはらしながら、じっと見ていると、
波多野は外来受付を素通りし、
お見舞いをする受付のカウンターへ直行した。
どうやら目的は受診ではないらしい。

来院した人物の氏名、お見舞いの患者の氏名、
それらを記入して受付をする。
お見舞いの患者の氏名が、俺になっていた。
またぶっと息を吐いてしまった。

波多野と並んで歩いて、俺の病室へ行く。
病室にいるのは当然、ベッドで寝ている俺だけなのに、
ドアをご丁寧にノックし、波多野は入室した。

ベッドの隣の椅子に波多野が座って、
俺のことを眺めた。
つん、と俺の頬を突き、無反応の俺へ微笑む。

その笑みが崩れて、うるうると目が潤んできた。
そして、ごしごしと目を擦りながら、こう呟いた。
「仲村さん‥ごめんなさい‥」

バカ、謝るのはこっちの方なんだっての。
心配かけてごめんな波多野。
だけど、俺、ちゃんとそっちに戻ってやるからな。
そんでもってお前のことちゃんと諦めてやる。

今は拭いてやれない涙を見ながら、俺はそう誓った。

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