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  [ 雨上がりの最果てで 27 ]
2013-01-21(Mon) 04:20:00
外を眺めると雨が降っていた。
こんなどしゃ降りの中だっていうのに、
波多野がわざわざお見舞いにきてくれた。
それだけで俺は嬉しかった。

波多野は、下を向いたまま目を擦っている。
しばらくして、少しでも気持ちが晴れたのか、
目を赤くしたまま顔を上げた。

ポケットから取り出したティッシュで、
ぐしぐしと目や鼻を拭っている。
そんな仕草も可愛くて、きゅんとしてしまった。

ぴくりとも動かずに寝ている俺を、
じっと波多野が見続けて、10分が経過。
その時、呟きが聞こえた。

「俺のこと本当は何だろう‥」

どきっと胸が跳ねた。
波多野の台詞が、何のことが判ったからだ。

文具店の倉庫で、段ボールが崩れてきて、
必死に波多野を死守し、意識がなくなる直前、
波多野へ思わず放った言葉だ。
忘れてくれても構わないのに、
覚えられていたことに驚いてしまった。

くそ、時間を戻せるなら自分が言ったことを、
すぐにでもなかったことにしたい。
いやいや、それ以前に倉庫を整理して、
段ボールなんかを崩れないようにすればいいか。
ってか、そもそもそんなことできないけど。

「俺のこと本当は嫌いだった‥のかな‥」
ベッドに寝ている俺に、波多野が小さく訊ねた。

「違う!そんな訳ないだろ!」
咄嗟にそう怒鳴った。
今の俺の声が、聞こえないって判っているのに。

瞬間、壁際にあった丸椅子が、
がしゃんと音を鳴らして床に倒れた。
波多野と俺は同時に、びくっと体を震わせる。
波多野は驚きながらも丸椅子を立たせて、
ぽつりと呟いた。

「足が4つあるのにどうして倒れたんだろう‥」

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