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  [ 雨上がりの最果てで 29 ]
2013-01-24(Thu) 06:20:00
ベッドの俺の様子を見にきただけで、
兄貴はすぐに病室をあとにした。
波多野同様、兄貴もこれからバイトに直行らしい。

兄貴は現在、満さんのパスタ店でバイトしている。
以前バイトしていた居酒屋は、いつの間にか辞めていた。

身内だからっていうのもあるかもしれないけど兄貴は、
俺なんかよりもマジメで何でもそつなくやる。
人間関係や、ちょっとしたトラブルなんかも、
大人の対応で、すんなり解決してしまう能力があるのだ。

だから、どうして辞めたのかを聞いたことがある。
そしたら、満さんのパスタ店のほうが割がいいから、
と笑いながら答えられた。

確かにパスタ店のバイトは、食事もつくし時給もいいし、
なんたって満さんの傍にいられる、という特典がある。
兄貴にとっては最高のバイトだろう。

夕方に父さんが病室へ入ってきた。
昨日と違って私服を着ている。
ベッドに寝ている俺のことを見ながら、
ふうっと息を吐いた。

父さん、眠れなかったって顔をしている。
目の下が、窪んでいてうっすら青くなっていた。

父さんは疲れたように笑いながら、
ベッドの俺の顔を撫でてきた。
撫でている指が、俺の髪と首に触れ、
それから針が刺さっている手で止まった。
針の上で、点滴の滴が単調に落ちる。

「郁央と離れて暮らして3年か。
 お前はこんなに大きくなったんだな。
 それなのに、久々の対面が、
 まさかこんな形になってしまうなんて‥」
俯いた父さんが、目を拭う。
たぶん、誰もいない室内で泣いている。

こんな俺のために泣いてくれた父さんに、
ごめんなさいっていう気持ちでいっぱいになって、
俺もつられて泣いた。
浮いていた俺は、父さんの隣に降りて、
そっと寄り添った。

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