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  [ 雨上がりの最果てで 30 ]
2013-01-25(Fri) 06:20:00
しばらくして、父さんが顔を上げる。
泣いたことによって少しすっきりしたようだ。
疲れていた笑みが優しくなった。

その時、ノック音がした。
父さんが返事を返すと、ドアが開かれる。
そこには、高校の部活の後輩と、
後輩ではないもう1人がいた。
部活の後輩は、誰だろうと聞きたそうに父さんに、
会釈しながら挨拶をする。

「こんにちは。和賀高で美術部の後輩の、
 阿久津と言います」
「‥こんにちは。笹崎です」

久々に目にした阿久津が立っていた。
そう言えば、兄貴が俺の友達に、
俺のことを連絡するって言ってたっけ。

隣にいるやつは知らないけど、
きっと阿久津の友達だろう。
友達は有名な、誰かに似ている気がするけど、
すぐには思い出せなかった。

父さんも同じことを思ったのか、
阿久津よりもその友達のほうを凝視している。
すると、笹崎という人物が、恥ずかしそうに俯いて、
阿久津の後へと身体を隠した。

「おっと、すまない。こんにちは」
「仲村さんのお兄さんから連絡がきたので、
 早速なんですけどお見舞いにきました」

阿久津は持ってきた花束を渡した。
父さんが嬉しそうに手にする。

「そう、わざわざありがとう。
 郁央はこの通りだけど喜んでいると思うよ」
「話しかけても構いませんか?」
「もちろん。何でもいいからを声かけてあげて」

阿久津と笹崎が、ベッドに近寄った。
ベッド策に手を添えて、阿久津が穏やかに話しかける。

「仲村さん、阿久津です。
 お見舞いにきました」
「いつもありがとうな、阿久津」

聞こえないって判っている。
それでも、まるでいつものように、
阿久津にむかって返事をした。

俺の声がしっかりと耳に届いたかのように、
にこりと阿久津が微笑んでくれる。
阿久津の笑顔は、俺にとっての癒しとなった。

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