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  [ 雨上がりの最果てで 32 ]
2013-01-29(Tue) 05:30:00
阿久津は、父さんと楽しそうに喋ってから、
またきますと言い残し行ってしまった。
笹崎という人物は、ほとんど喋らなかった。
それどころか、阿久津の洋服を、
きゅっと握りながら立っているだけだった。

こいつらもしかして、とふと思って、
そんな考えを消すように、首を横に振る。
いやいや、まさか、それはないだろう。
いくら俺が波多野を好きだからって、
何でもそういう方向へ考えちゃいけない。

阿久津と笹崎が、病室からいなくなって30分後、
友達やクラスメイトもお見舞いにきてくれた。
入れ代わり立ち代わり、たくさん人がやってきて、
悲しんでいる暇もないほど父さんが忙しそうだ。

静まっていた病室が騒がしくなる。
お菓子やら花束やらが、たくさん集まって、
さすがの父さんも困った顔になった。
それでも、俺にこんなに友達がいたんだと思ったのか、
困りながらも嬉しそうだった。

一段落した直後、今度はバイト仲間がきてくれた。
その中には、兄貴の友達の、高澤さんの存在もあった。

高澤さんは兄貴思いのいい友達だ。
兄貴のバイトがオルテンシアになる以前、
兄貴の様子がおかしいと何度も相談してきたり、
兄貴が風邪を引いたと言った時は、
駆けつけるようにお見舞いに行ったらしい。
高澤さんは本当に、穏やかでいい人だなって思う。

俺がここにいるのを知っているかのように、
ベッドで寝ている俺へ、みんなして話しかけてくれた。

「仲村、バイト先で待ってるぞ」
「そうそう、棚卸っていつも人手足りないからね」
「棚卸が終わったら飲みに行くからな」
「さっさと起きないと、仲村に飲み代を請求する」
「飲んでないのに請求するの酷すぎるじゃん!」
なんて言いながらみんなが笑った。

本当に、飲んでないのに請求だけ俺にするなんて、
酷すぎるし鬼すぎる。
でも、これが優しさだって判っている。
みんなに見えていない俺も、父さんも判ってて笑った。

みんなにいっぱい心配かけてしまっている。
早くどうにかして起きないと、と改めて思った。

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