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  [ 雨上がりの最果てで 34 ]
2013-01-31(Thu) 05:50:54
翌日も、父さんと兄貴が俺のところにきた。
ベッドで寝ている俺は、相変わらず意識がない。
そんな俺に父さんが、たくさん話しかけた。

その時にノック音がした。
なんと、赤石さんと青柳さんがお見舞いにきた。
2人との対面は久々で、すごく嬉しかった。
と言っても見えているのは俺だけなんだけど。

「こんにちは、初めまして。
 郁央君の友達の青柳と、こちらが赤石です」
「どうも、こんにちは」
「初めまして。郁央の父です。
 お見舞い、ありがとうございます」
「‥こんにちは。郁央の兄です」

兄貴の口調が、いつもと違った。
どう違うのかまでは判らないんだけど、
でも、いつもと微妙に相違している。

俺は昔、和賀高に不法侵入し、
ばれそうになった相手に怪我をさせてしまったが、
仲間に救われたということを兄貴に話した。
その仲間が、赤石さんと青柳さんだ。
2人は、和賀高の警備員で、俺のことを許してくれて、
俺の悩みまでもを受け止めてくれた。

赤石さんと青柳さん、そして兄貴が対面するのは、
ここでが初めてだった。
だからなのか、兄貴の空気が、ぴりっと張り詰める。

赤石さんと青柳さんは、父さんに話を聞いていた。
俺がこうなった経緯を耳にすると、しょうがないなあ、
とでも言いたそうに笑った。

2人はいつだって笑顔なんだよね。
許してくれた時も、構いにきてくれた時も、
経験が豊富というか大人の余裕というか、
しょうがないなあって笑ってくれていたっけ。

「郁央、起きたらツーリングに行こうな」
「そうだね。僕達と郁央君の3人で、
 どこか温泉とか旅行いこう。ヒロの奢りでさ」
「ちょ‥それは勘弁してくれよ」

2人の漫才に、父さんが笑った。
ヒロさんもカズさんも、大きいバイクに乗っている。
起きたらツーリングに連れてってもらおう。
もちろん、ヒロさんの奢りでね。

ヒロさん達はすぐにお暇した。
どうやら、これから仕事があるらしい。
いつもつい忘れちゃうんだけど、
一応2人は、サラリーマンなんだよな。

2人は会釈し、病室を立ち去る。
すると、父さんを残して、
兄貴が廊下に出てくると2人の背後に声をかけた。
「‥あの、すみません」

ヒロさんとカズさんが、首を捻って立ち止まる。
2人は顔を見合わせ、きょとんとした。

「何?どうしたの?」
「‥ありがとうございました」
「わざわざそんな、お礼なんて言わなくても‥」
「お見舞いじゃなくて以前のことです。
 郁央を許してくれたこと、郁央を救ってくれたこと、
 お礼をちゃんと言いたかったんです。
 自分もあいつもお2人にすごく感謝しています」

兄貴は2人に、大きく頭を下げた。
そんな兄貴に2人は微笑んだ。

「いいんだって、そんなの。
 みんなさ、どこかで誰かを救ったり、
 どこかで誰かに救われたりする。
 世の中、そういうもんなんだから」
「そうだね。そういうものが巡り巡っているんだよ」
「兄としては今はとても辛いだろうけど、
 郁央のために頑張ってあげて」
「はい‥ありがとうございます‥」

2人が笑うと兄貴も笑った。
それを見た俺も嬉しくなって、にこりと笑った。

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