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  [ 雨上がりの最果てで 35 ]
2013-02-01(Fri) 05:05:00
郁央にもたくさん友達がいるんだな、
なんて話をしながら、父さんと兄貴は帰っていった。
そして、また、ベッドに寝ている俺だけが、
ぽつんと取り残される。

やがて、いつものように、
看護師が訪室してきて点滴を交換してから、
体の向きを逆に変えて、静かに去る。
俺はと言えば、病院の中の探検に飽きて、
窓から夜景を見ながら、ぼーっとしていた。

すると、バイト終わりなのか、
波多野がまたお見舞いにきてくれた。
面会時間には、ぎりぎりセーフだ。

「仲村さん、今日もきちゃいました」
ベッドに寝ている俺に、波多野が微笑み、
マフラーを解いたりコートを脱いだりする。
鼻が赤く、外が寒いんだって見て判った。

波多野ならきてくれるだけで大歓迎だ。
なんと言っても、俺のテンションが上がる。

「でも‥起きていたら嫌がられるかな‥」
「嫌がる訳ないだろ!そんなこと言うなって!」
波多野のネガティブな発言に、つい反論した。
それも、ツッコミの手を入れながら、満面の笑顔で。

がしゃん、という轟音が反響する。

壁際にあった丸椅子が、また倒れた。

波多野が怯えつつ丸椅子を直しながら、
椅子の足部分や裏側を、じっと見つめる。
「確かこれ前にも倒れたよね。ネジが緩いのかな。
 ネジが緩いなら危ない‥端っこに置いとこう‥」

波多野がその丸椅子を、端のほうへ置いてくれた。
そして、ベッドで寝ている俺へ、
バイトでの出来事を報告してくれる。
俺は波多野の隣で、頷きながらそれを聞いた。

報告が終了し、しんと静まり返る。
波多野が、ベッドで寝ている俺を、じっと見つめる。
さっきより、何となく視線が熱っぽい。

そんなことを思っていると、波多野が右手を、
俺の口に、そっと寄せてきた。
「ちゃんと息してるのかな?」

一応、ベッドで寝ている俺は、
これでも自発呼吸している。
見た目は、すやすやとただ寝ているみたいだ。
健やかな寝息は聞こえないけど。

波多野のことを見守っていると、
俺に翳していた手を取って、
ベッドにゆっくりと顔を近づけてきた。

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