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  [ 雨上がりの最果てで 38 ]
2013-02-04(Mon) 06:30:00
「郁央、必ずチャンスがくると思うわ。
 チャンスを逃さないでしっかり掴むのよ」
「母さんは、それでいいの?」

だって、俺があっちに戻ってしまったら、
母さんとはまた別れてしまう。
言わなくてもそれが判ったのだろう。
母さんは気丈に笑ってみせた。

「バカね。母さんはもう死んでいるのよ。
 郁央があっちに戻っても見守っているわ」
「うん‥ありがとう‥」
「それにね、天国のカラオケの選曲って、
 たくさんあって楽しいんだから。
 現世のカラオケよりも選曲あるのよ」
「そ‥そうなんだ‥」
楽しそうな母さんに、あははと苦笑いした。

落ち込まないように振る舞っているんだろう。
だって、母さんが俺達と離れて、
寂しかったり悲しくないはずがない。
俺達だってそれを経験したから、よく判るんだ。

「さて、私はそろそろ戻るわね。
 またくるから、頑張るのよ郁央」
「うん!頑張るよ!」
「そうそう、そうこなくっちゃ」
またね、と言って母さんは消えてしまった。

頑張るなんて宣言したけど、どうすればいいのか。
はあ、と溜め息を吐き、窓の外を見る。
すっかり日が高くなっていて、昼になる頃だった。

父さんは家にいるだろう。
兄貴と波多野は、きっとバイトだろうな。
バイトが終わったら、疲れた体で、
波多野はまたここへお見舞いにくるのだろうか。
俺のことなんか気にかけないでいいのに。

腹は減らない、夜も眠くならない。

疲れることもないし、汗をかくこともない。

そんな俺はふわふわと浮きながら、
誰かがここへくるまで目を閉じることにした。

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