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  [ 雨上がりの最果てで 42 ]
2013-02-09(Sat) 07:15:00
逢えるなら逢いたいし、できれば死にたくない。
でも、戻ることのできる方法は見つからなかった。
俺にだってどうすればいいか判らない。
浮いていた俺は、波多野の隣に立つ。
この目線、この角度、どこから見ても好きだった。
大好きで大好きで、ずっと見ていたかった。

「嫌いじゃない。好きなんだ、波多野」

心からそう思っている。

瞬間、再び丸椅子が倒れ、みんなが凍りついた。

いや、みんなじゃなかった。

「また倒れた‥どこが壊れてるのかな‥」
椅子を直した波多野が呟いた。
波多野以外は、微動だにせず波多野のことを、
固まったまま眺めている。

そんな波多野の言葉に反応したのは、
兄貴の隣にいる満さんだった。
「また、ですか?」
「そうです。たまに今みたいに倒れるんです」
「たまに?どんな時にですか?」
「え?あの‥それは‥ここじゃちょっと‥」

満さんは波多野を連れて、ここを退室していった。
気になった俺はドアをすり抜けて、2人の動向を見守る。

「ここなら誰もいません。
 私にだけでも教えて頂けませんか?」
「いいですけど内緒話でもいいですか?」
「構いません。お願いします」
満さんが屈んで、波多野がそっと耳打ちする。

残念ながら俺にはその内容までは聞こえない。
波多野がちょっと赤面しているのが印象的だった。
どんなことを教えているのだろうか。

少しして話が終わり、波多野と満さんは病室へ戻った。
そして、兄貴へ満さんが唐突に訊ねた。
「舞斗君、郁央君の嫌いなもの知っていますか?」
「え?何ですか急に?」
「いいから教えて下さい」
「えと、ピーマンとゴーヤが嫌いだったはずですけど」

兄貴の回答に、ヒロさんが口を塞いで笑い出した。
「郁央、ピーマンとゴーヤが嫌いだったのか。
 やっぱりまだまだガキだな、くくく」
「俺もちょっと前まではゴーヤ嫌いだったけどな」

腕を組みながら口を挟んだのは、後藤野選手だった。
額の脇に、ぴくぴくと怒りマークを浮かべている。
そんな後藤野選手に、ヒロさんは平謝りをした。
前澤チーフが後藤野選手を優しくたしなめ、
ヒロさんと共にカズさんも謝っていた。
次第に、なぜか餃子の話題になり4人は仲良くなった。

「郁央君に、ピーマンを押し込んでみませんか。
 あ、ゴーヤの餃子でもいいですよ。
 そうすれば飛び起きるかもしれません」
「ちょ‥ちょっと!やめてよ満さん!」
聞こえないと判ってても、俺はつい焦って言った。

丸椅子が、がしゃんと音を立て倒れて、
再びみんなが固まった。

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