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  [ 雨上がりの最果てで 43 ]
2013-02-11(Mon) 06:40:00
「私がさっき言ったこと、
 もしかしたら実現できるんじゃないですか」
顎を撫でながら低く言ったのは、満さんだった。
うっすらと冷や汗を浮かべている。

「さっき言ったこと?」
「精神体、というものでもここにあれば‥」
「前澤さん経由で、郁央とみんなで会話ができる、
 ってやつですよね」

兄貴と満さんの会話に、全員が強張る。
青ざめながらも見えないものを探すように、
きょろきょろと空中を見回している。
たぶん、霊ってやつを探しているに違いない。

「さっきの椅子の反応からして、
 郁央君によるラップ現象ではないでしょうか。
 イヤだという気持ちがそうしていると推測できます」
「だから、ピーマンとゴーヤのことを?」
「誰だって嫌いなものを食べたくありません。
 イヤだって思ったんだと思います」
ベッドに寝ている俺のことを、満さんが見つめる。

そりゃあ、俺だってみんなと喋りたい。
みんなと話せたらヒントが見つかるかもしれない。
でも、前澤チーフ経由で、
会話することなんて本当にできるのだろうか。

さっきまで慄然としていた前澤チーフが、
後藤野選手に微笑まれて笑顔になっていた。
笑った顔で、満さんに頷いてみせる。

「もしも、それが可能だったら協力しますよ」
「ありがとうございます、前澤さん。
 でも、非科学的であり根拠もほぼ皆無ですから、
 私もそれができるかまでは判りませんけどね」
満さんが笑うと、前澤チーフが安堵した。

その時だった。

俺の体が、見えない力に、ぐぐっと引っ張られた。

その方向にいるのは前澤チーフだ。

引っ張られるような吸い込まれるような、
形容しがたい感覚だった。

どこかに掴まって拒むこともできない。
怖くなった俺は、ぎゅっと目を閉じてしまった。
やがて、見えない力がふっと消えて、
どうなったのか確かめるように、静かに目を開ける。

足を見ると床に立っていた。
でも、見たことのない靴だった。

隣を見ると後藤野選手の頭が見えた。
澄んだ瞳で、確かめるように俺のことを見ている。
ヒロさんにカズさん、阿久津に笹崎も、
どきどきしている顔なのがおかしかった。

兄貴と満さんも表情が固まっていた。
波多野は、息をしていないような顔をしている。
それがおかしくて、ぷっと噴き出した。

「変な顔だな、波多野」

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