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  [ 雨上がりの最果てで 45 ]
2013-02-13(Wed) 06:15:00
「愛があれば戻れるって聞きました」
「愛?どんな愛ですか?」
「えと‥俺もそこまでは判らないんです‥」

満さんは困ったように、腕を組む。
俺も困ってしまい下を向いた。

兄貴への兄弟愛か。
ヒロさんとカズさんへの仲間愛か。
阿久津と笹崎への後輩愛か。
満さんへの信頼愛か。
前澤チーフと後藤野選手への敬慕愛か。
それとも、波多野への愛情か。

愛だけでもこんなに溢れているのに、
愛があってもどうすればいいのか判らない。
まさか、前澤チーフの肉体で、
誰かと結ばれる、なんて訳にはいかない。

その時だった。
見えない力に、俺の体がまた引っ張られた。
たぶん、伝えるべきことを伝えたから、
ここから出ていかないといけないんだと思う。

「そろそろ話をするのは終わりみたいです」
言って波多野を見ると、悲しそうな顔をされた。

前の夜、いきなりあんなことしてごめん。
好きだから触りたかった。
だけど、俺ちゃんと諦めるって決めたから。
波多野は、どうか誰かと幸せになって。

会話できるのがこれが最後なら、
それくらいは伝えたかった。
でも、人前で、そんなこと言えるはずもない。
それすらも叶わない願いとなった。

「郁央君、あともう1つだけ。
 タイムリミットはあるんですか?」
「今日までだって宣告されてます」

満さんと兄貴が呻いた。
タイムリミットが今日までだということは、
このミッションをクリアできなければ、
言いたくはないけど死んでしまうということだ。

ぐいぐいと体が引っ張られていく。
次の一言が最後と思い、俺はみんなに笑いかけた。
「みんな、ごめんなさい」

瞬間、前澤チーフの肉体から、
俺の魂みたいなものが吐き出されて、
俺はまた空中に浮いた。
はっとした前澤チーフだけ何事があったのかと、
おろおろと困惑している。
その姿をみんなが悲しそうに眺めていた。

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