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  [ 雨上がりの最果てで 46 ]
2013-02-14(Thu) 07:00:00
ごめんなさいが最後の言葉になってしまった。
ありがとうって言えばよかった。
みんなには感謝しかないのになんで謝罪したのか。
謝罪ってよりただの贖罪だ。

静寂の漂う病室で、ベッドで寝ている俺を、
みんなが囲いながら見つめている。
もう、俺の魂は、そっちには戻れないんだ。

俺はこのまま母さんのところへ行くのだろう。

現世にたくさん未練はあるけど仕方がない。

そんなことを思っていると、満さんがこう言った。
「愛があれば戻れるんですよね、郁央君」

考えながら満さんは唸っていた。
そんな満さんを、みんなが注目している。
満さんは俺をここまで導いてくれた。
この人からならいいアイデアが出るんじゃないか、
俺達はそんな期待をしていた。

唸って唸って、にぱっと満さんが笑った。
「やっぱりここは王子様のキスでしょうかね」

突拍子もない発言に、みんなの目が点になった。
もちろん、そこには俺も含まれている。

「なんて、いきなりすみません」
アイデアを口にした満さんは、
赤面し恥ずかしそうに頭部を掻いている。
満さんのこんな顔、初めて見た。
大人なのになぜかとても可愛かった。

と、ヒロさんが鼻息荒げながら一歩出て、
ぐいっと腕まくりをした。
「それなら俺がやります」

みんなの目が再び点になった。
カズさんに至っては、焦ったような怒ったような、
何とも言えない顔をして、ヒロさんを止める。

「ちょっと、ヒロやめなよ」
「それしか方法がないなら仕方ないだろ」
「愛のあるキスだよ?愛のあるキスできるの?」
「仲間としての愛情ならあるさ」
「それなら僕もあるけど‥」

ヒロさんとカズさんが揉めている隣で、
兄貴が何か決心し、満さんにこう告げた。
「俺がやってみせます。満さんいいですよね?」
「兄弟としての愛情ですか?」
「そうです。こんなこと誰にも頼めません」
「私だったら頼まれますよ」

4人のこんな光景を、他5人が苦笑いし、
止めるでもなく眺めているだけ。
いや、こんな混沌とした状況なんか、
誰がどうやっても止められるはずがない。

こんな状況の病室にきたのは看護師の谷村さんだ。
ここでは何が起きているんだ、という顔をしながら、
ぽつりとドアの前に突っ立っている。
「あの、そろそろ面会時間終了しますよ?」

全員、ぴたりと固まって笑った。
というか笑うしかないって感じだろう、これ。

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