BLUE BIND

BL小説ブログ。危険を感じた方はお逃げ下さい。
  [ 雨の屋根の下 6(完) ]
2013-03-16(Sat) 07:45:00
すぐ後におじさんが帰ってきた。
事情を説明し、父さんと電話で話をしてくれて、
とんとん拍子に全て解決してしまった。

そして、すぐに引っ越しすることになった。
学校が始まるまでには基盤を作るのがいいだろう、
というおじさんの提案からだった。
そういうことで、俺のほうが兄貴よりも先に、
住み慣れたマンションを出て行くことになった。

ベッドや机は処分をお願いした。
これからこのマンションは、新しい家族が住むんだ。
ここも、茉麻ちゃんの部屋になるかもしれない。

大学のあとに就職でもしたら、
それこそアパートで一人暮らしとかするだろう。
家具類は、そういう時に買えばいいさ。

荷物は、ほとんど洋服と教材だけだった。
これだけだったら自家用車でどうにかなると、
おじさんが車で迎えにきてくれた。
助手席の波多野が、ひらひらと俺に手を振ってくれる。

「郁央、だらしない顔してるなあ」
頬を緩ませながら手を振っていると、
兄貴に呆れたように右脇を突かれてしまった。

「そういう兄貴だって、満さんといる時は、
 だらしない顔してるって知らないの?」
「俺はそんな顔しないし」
「してるよ。いつもだよ、いつも。
 でもさ、満さんと付き合ってんだから、
 だらしなくなっていいんじゃないの」
言って笑うと、にこりと兄貴も笑顔になった。

兄貴がおじさんに挨拶し、全員で車に荷物を積む。
そして、俺は後部座席に乗り、その隣に波多野が座った。
そんな行動が自然すぎて、更にだらしない顔になる。

「ほら、お前のほうがだらしない顔だよ」
「いいんだって、だらしなくても。
 兄貴、またメールと電話するからね。
 満さんにも宜しく伝えておいて」
「了解。おじさん、波多野君、
 郁央のこと宜しくお願いします」

兄貴が会釈し、おじさんが頷いて応える。
そして、車はゆっくりと走り出していった。

兄貴と離れてしまうが寂しくなかった。
だって、俺の隣に、いつも波多野がいる。
それに兄貴とはずっと兄弟だ。
どこにいても俺は兄貴と繋がっているんだ。

途中、ぱらぱらと雨が降ってきて、
やっぱり雨になったのかと笑ってしまった。
俺達に何かある時はいつも雨なんだよね。

波多野と目を合わせて手を繋いだ。

「夏樹、好きだよ」

おじさんに聞こえないように、口パクで伝えると、
波多野は笑顔で、頷きながら答えてくれた。

「俺もずっと好きですよ、郁央さん」

前話へ

雨の屋根の下、これにておしまいとなります。
お付き合い頂き、ありがとうございました!


お気に召しましたら一票お願いします。
にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
雨の屋根の下 | TB:× | CM : 0
雨の屋根の下 5HOME作者の独り言 30

COMMENT

COMMENT POST

:
:
:
:



 
 管理者にだけ表示を許可する


copyright © 2024 BLUE BIND. All Rights Reserved.
  
Item + Template by odaikomachi