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  [ 君とは幸せになれない 7 ]
2013-04-01(Mon) 07:00:00
朝ごはんと言っても、消化にいいものを用意した。
おかゆ、緑茶に梅干しに卵焼きだ
弱った胃には、質素ではあるがこれで充分だ。

藤ヶ谷君が、きらきらした目でそれらを見ている。
テーブルに座りながら笑ってしまった。

「温かいうちに食べよう。いただきます」
「あ、はい。いただきます」

藤ヶ谷くんはおかゆを一口食べると、
残りをがっついて食べてすぐに平らげてしまった。
僕はまだたった一口しか食べていない。
若者の食欲に、ぽかんと驚いてしまった。

藤ヶ谷君が、空になった茶碗を眺めている。
物欲しそうな目線に、僕ははっとして声をかけた。

「おかわりあるけど、どうだい?」
「いいんですか?いただきます」

見えないしっぽを振りながら、茶碗を渡す藤ヶ谷君。
やはり、犬っぽく見えてしまう。
ペットを飼ったらこんな感じなのだろうか。

おかわりを渡したら、それはゆっくり食べてくれた。
じっくりと味わうように噛んでいる。
梅干しも卵焼きも、しっかりと食べてくれて、
お茶を飲んで箸を置いてから手を合わせた。

藤ヶ谷君は結局、おかゆを3杯おかわりした。
昨日、あれだけ吐いたとは思えないほど、
食欲もあり元気もあり、そして顔色もいい。
僕が作ったおかゆをとても気に入ったようだった。

「ご馳走様でした」
「いやいや、お粗末様でした。
 気持ちのいい食べっぷりだったね藤ヶ谷君」
「おかゆ、すごく美味かったです。
 こんなに美味いおかゆ、生まれて初めてですよ」
「これ、少しだけ砂糖が入っているんだ」

顔色がよくなった藤ヶ谷君が、びっくりした。
藤ヶ谷君にとっては予想外だったらしい。

「砂糖ですか」
「そうだよ。僕はこれが好きなんだ」
「へえ、こういう作り方もあるんですね。
 母親のおかゆはしょっぱくて苦手だったんですよ。
 俺にはこっちのほうが合ってるみたいです。
 今度、レシピ教えて下さい」
「ここまで運んであげてレシピまで教えるんだと、
 ちょっと高くつくかな。それでもいいかい?」

笑いながら言うと、藤ヶ谷君が茶で咽た。
そして、参ったなと言いたそうな顔をしながら、
ぽりぽりと頭を掻きながら僕に言う。

「それなら、そのうちごはん食べに行きませんか。
 美味いとこ知ってるのでご馳走させて下さい。
 えへへ、それでチャラにしてもらえませんかね?」

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