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  [ 君とは幸せになれない 11 ]
2013-04-09(Tue) 05:35:00
藤ヶ谷君がリビングで萎縮している。
借りてきた猫のように、とても大人しい。

その藤ヶ谷君へと、コーヒーを出した。
どうして訊ねてきたのか、聞こうとは思わない。
藤ヶ谷君だってもう子供じゃないんだ。
こちらから聞くよりも、あちらから言うのを、
待たなければいけないと思ったからだ。

かさ、と音がする。
コーヒーカップの横にビニールが置かれた。
藤ヶ谷君が僕を上目遣いで見る。
「これ、食べてほしくて持ってきました」

もじもじしている、藤ヶ谷君。
気のせいか照れているように見えた。

藤ヶ谷君が、ビニールを開けるかと思いきや、
そういう気はないらしい。
いつまでも黙ってこのままでいる訳にもいかず、
僕がそろそろとビニールを開いて、中を出す。

熱いお好み焼きが、パックに入っていた。
ソースと青のりの香ばしい匂いが、
ふわふわと鼻をくすぐってくる。
あまりにも美味しそうで、ごくりと唾を飲んだ。
ついでに、空の腹も鳴る。

「どうしたんだい、これ」
「この店のお好み焼き、すごく美味いんです。
 だから、食べてほしくて持ってきました」
「そうなの?わざわざありがとう」

微笑んだら藤ヶ谷君も笑顔になった。
藤ヶ谷君の笑顔は、まるで少年のようだ。
可愛いくて純粋そうである。

「こちらこそ先日の送迎会で迷惑かけました。
 その時のお礼も兼ねてます」
「そんなこと気にしなくていいのに」
「そういう訳にはいきませんよ」

意外とマジメな藤ヶ谷君。
送迎会での出来事を、ずっと気にしていた。
あんなのお互い様だというのに。

「それじゃあ、お茶でも淹れようか」
僕は立ち、2人分の玄米茶を用意した。

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