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  [ 青い空を見上げて2nd 26 ]
2010-07-08(Thu) 14:25:24
笹崎侑津弥


仁志は、机からとったプリントを手にした。
それを取りにここへ来たらしい。
「さあ、か。ウッチの返事って本当つれないな」
「‥ウッチなんて呼ぶからだ」
口調を強くして仁志を睨んだ。

このニックネームは、ずっと不本意だった。
ウッチって馴れ馴れしくてイヤだ。
普通に名前で呼ばれる方がマシだけど、
クラス全員に浸透してるし、もうどうにもしようがない。

でも、仁志はにこりと微笑んでいた。
汗に濡れた髪を上げて、仁志らしくない口調になった。

「ウッチってみんなに呼ばれるようになって
 ちょっとは明るくなったよな。
 笹崎って前はちょっと暗かったから安心したよ」

仁志なりに俺のこと気遣っていた、ということらしい。
言われないと判らないこと、今ここで初めて知った。

「でも、そんなに気にしてたの知らなかった。
 俺はもう呼ばないよ。今まで悪かったな」
「‥なら、普通に名前で呼んでくれて構わないから」
仁志に自然と、俺はそう言えた。

「へ?」
「‥だから、仁志は、ウッチじゃなくて、
 普通に名前で呼んでくれて構わないっつーの」

改まって言うのが恥ずかしくて、みるみる顔が赤くなる。
仁志はきょとんとした直後、ぷっと吹き出した。

「あはは、ウツミってそういうキャラだったんだ。
 なんか不器用だけど、うん、いいよそういうとこ。
 じゃあ、俺のことはマキって呼んでくれよ」

不器用だけどは余計だろう。
でも、仁志の余計な一言も、友達だから出てくる台詞だ。
今となっては言葉のどれもが優しかった。

「‥マキって?」
「俺、天国の天に清潔の清で、天清って名前でさ、
 アマキヨの字の真ん中がマキになってるだろ。
 昔からそう呼ばれてるんだ」
仁志、じゃなくて、マキは笑った。

ここで、ふと思い出した。
体育祭後の怒涛の部活勧誘で、三波さんが仁志のことを、
マキって呼んでたのを。

「おかしな双子のせいで大変だろうけど、
 阿久津といるのがウツミには似合ってるぜ」
「‥うん。サンキュ」

俺はくすっと笑った。
まさか、マキにそう思われているとは知らなかった。

「じゃあ俺練習戻るから」
そう言って、マキは教室をあとにする。

俺もそろそろ帰ろうかと、カバンを手にした。

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