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  [ 君とは幸せになれない 26 ]
2013-05-16(Thu) 06:00:00
あれから、どうなったか。

どうもこうもなく、藤ヶ谷君とは通常通りだ。
あっという間に2週間が過ぎてしまったが、
進展もなく後退もなく、いつものままである。

2週間後の本日の開店前、
珍しいことに藤ヶ谷君に声をかけられた。
心なしか焦っている顔をしている。

「大津さん、ちょっといいですか?」
口調や態度は、いつも通りだ。
あの時のようにタメ語ではない。

「うん。どうしたんだい?」
「シフトについて相談したいんです。
 大学の講義で、うっかり見落としがあって‥」
「いいよ。今ちょっと話そうか」

フロアのスタッフに、藤ヶ谷君と事務所に行くと伝えて、
オープン準備をしていた僕達は、そこを後にした。
事務所には、シフト表が置いてある。

「どこがバイト出られなくなったんだい?」
ボールペンを用意してから、そう訊ねる。
すると、藤ヶ谷君が、シフトの日付を指差した。

「ここと、ここと、ここです」
「了解。それならここは仲村君に出勤してもらって、
 こっちは坂村さんに、ちょっとお願いしてみよう。
 残るはこの日だね。ここはみんな用事あるみたいだし、
 僕がなんとかして出るしかないか」

頭を掻いてから腕を組む。
フロアだろうとキッチンだろうと、
最低限の人員確保は必要だ。
店を回転させられないし客に迷惑もかかるし、
スタッフもしんどくなってしまう。

「シフトには本部会議ってありますよ?」
「そうなんだよね。まあ、楠さんに事情を伝えれば、
 欠席だけど出席にしてくれるさ。
 楠さんはそういう融通を利かせてくれるからね」

仲村君に電話し、坂村さんにも電話して、
シフトを変更してもらった。
病気の時や、急用の時は、みんなお互い様だから、
ブーイングもなく快くシフトを変えてもらえる。
そういう意味ではここはいい職場だ。

「講義の予定、今度からは見落とさないようにね」
ボールペンと修正テープで、シフト表を直した。

「すみませんでした」
「人間なんだから勘違いはあるさ。
 さて、そろそろフロアに戻ろうじゃないか。
 もうオープンしているからね」

ドアに向かおうとした僕は、シャツを引っ張られて、
ゆっくりと振り向いた。

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